数珠の正しい持ち方・使い方を解説。宗派ごとに異なる作法を身につけよう
数珠は、仏式のお通夜やご葬儀・告別式だけでなく、法事・法要、お墓参りの際にも必要な仏具になります。また、最近ではお守り代わりとして普段からお持ちになる方もいらっしゃいます。そんな数珠ですが、正しい持ち方があることをご存じでしょうか。
数珠は、仏教宗派によって持ち方が異なります。今回は数珠の基本的な持ち方と、各宗派における違いについて解説します。また、焼香の作法も紹介していきますので、併せて参考にしてください。
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数珠とは
日本の仏教において、数珠は大切な法具のひとつとして扱われています。数ある法具の中でも個人で持つことが許されている大切なものであり、「念珠(ねんじゅ)」「念誦(ねんじゅ)」「誦数(ずず)」などと呼ぶ方も少なくありません。また、数珠には「本式数珠」と「片手数珠(略式数珠)」の2種類があります。
本式数珠は、数珠の正式な数である108個の珠からなる数珠となっており、各宗派によって正式とされる形が異なります。また、本式数珠には二輪(ふたわ)数珠や二連数珠などのように、呼び方や形状が異なるものもあるので注意が必要です。
一方の略式数珠は、片手数珠と呼ばれる一重の数珠になります。宗派に関わらず使用できるため、最も使いやすい数珠になります。故人様の宗派が分からないご葬儀に参列する場合、略式数珠を持参すれば問題ありません。
数珠のつくり・役割
数珠は、以下に挙げるようにさまざまな種類の珠を組み合わせて作られています。
部位の名前 | 特徴・意味 |
---|---|
親玉 |
・数珠の中でひときわ大きな玉で、房が連なっている ・片手数珠の場合は1つ、本式数珠の場合は2つある ・阿弥陀如来または釈迦如来を意味する |
地玉または主玉 |
・数珠の大部分を形成する玉 ・108の煩悩を表すとされている |
弟子玉(でしだま) |
・親玉から連なる玉 ・本式数珠にのみあり、房と露玉をつなぐ役割がある |
浄明玉(じょうみょうだま) |
・菩薩を意味する玉 ・親玉と弟子玉の間に位置する |
露玉(つゆだま) |
・弟子玉と房の中間に位置する玉 ・本式数珠にのみある |
四天玉 |
・地玉の間にある4つの玉で、四天王や四菩薩を意味している ・片手数珠の場合は、天玉(点玉)と呼ばれ、2つしかない |
ボサ玉 |
・片手数珠にのみある玉 ・親玉と房をつなぐ役割がある |
房 | ・露玉から連なる房 |
数珠の役割は、主に「煩悩を消す」「心身を浄化する」「仏への帰依を表す」の3つとされています。また、数珠にはお守りとしての役割もあり、厄除けや魔除けの役割も担っています。
数珠の種類
数珠には、片手数珠と本式数珠の2つが存在します。ご葬儀の際には、どちらを用いても間違いではありません。では、片手数珠と本式数珠の細かな違いについて見ていきましょう。
片手数珠
片手数珠とは、本式数珠を簡略化したものであり、そのため「略式数珠」ともいわれています。玉の数は54玉や27玉などさまざまで、どの宗派でも使用できるのが特徴です。片手数珠は、男性用数珠・女性用数珠の2つの種類があり、それぞれ珠の色や大きさが違います。
本式数珠
本式数珠とは玉が108個ある数珠のことで、僧侶が読経の際に用いるのは本式数珠のみとなっています。各宗派で構成が異なるので、用意する際には、宗派の本式数珠を理解しておく必要があります。他宗派のご葬儀に参列する際は、普段使っている本式数珠でも問題はありません。
ご葬儀での数珠の必要性
数珠は、ご葬儀に参列する際に必要な仏具です。なぜなら、数珠はあの世とこの世をつなぐ仏具とされているからです。数珠は「玉が連なっている」、転じて「あの世とこの世を連ねる」と考えられています。
現代のご葬儀においては、あの世へ向かう故人様に哀悼の意を表すために持つとされているため、故人様への礼儀として必要です。また、数珠を持って合掌すると煩悩がなくなるともいわれています。なお、数珠については以下の記事でも解説していますので、こちらも併せて参考にしてみてください。
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詳しく見る略式数珠の基本的な持ち方・使い方
数珠は左手に持つのが基本です。本項目では片手数珠(略式数珠)の持ち方を解説しますが、本式数珠の場合も持ち方は変わりません。ただし、本式数珠の場合は片手数珠よりも長さがあるので、二重にして持っておく必要があります。
・基本の持ち方
数珠を親指にかけ、人差し指から小指の4本を輪に通すようにします。その際、数珠は親指で押さえておきましょう。
・合掌時の持ち方
基本の持ち方のまま合掌します。その際、房は下に垂らすようにしてください。
・焼香時の持ち方
数珠は左手にかけたままにしておき、右手で焼香をあげ、数珠を両手にかけて合掌します。その後、数珠を左手に戻し、ご遺族に一例して席に戻りましょう。
宗教によって異なる数珠の持ち方・使い方
数珠の持ち方は、各宗派によってそれぞれ異なります。厳密に守らなくても問題はありませんが、できるだけ参列するご葬儀に合わせられるよう、事前に基本のマナーについて把握しておくようにしましょう。ここからは、代表的な宗教の数珠の持ち方や焼香の作法について解説していきます。
浄土宗での数珠の持ち方・使い方
まずは、浄土宗での数珠の持ち方や使い方を見ていきましょう。
合掌時の数珠の持ち方 |
①数珠を親指にかける ②人差し指から小指の4本を輪に通す |
焼香の回数 | 回数に決まりはない |
焼香の作法 |
①右手の親指・人差し指・中指で抹香をつまむ ②つまんだ指を上に向け、左手を添えながら額へ押しいただく ③香炉にくべる |
浄土真宗での数珠の持ち方・使い方
次に、浄土真宗での数珠の持ち方や使い方をご紹介します。
合掌時の数珠の持ち方 |
①親玉を親指にかけ、房は手の甲に垂らす ②本式数珠の場合は、2重にして親玉がそろうようにする |
焼香の回数 |
本願寺派:1回 大谷派:2回 |
焼香の作法 |
①右手の親指・人差し指・中指で抹香をつまむ ②額には押しいただかず、香炉にくべる |
日蓮宗での数珠の持ち方・使い方
日蓮宗での数珠の持ち方や使い方は、以下のとおりです。
合掌時の数珠の持ち方 |
合唱の際は基本的な持ち方で問題ないが、お題目や回向の際は以下のようにする ①数珠を八の字に捻り、両中指にかける ②数珠を手のひらで挟むようにし、房はそれぞれの甲に垂らす |
焼香の回数 | 3回 |
焼香の作法 |
①右手の親指・人差し指で抹香をつまむ ②静かに香炉へくべる |
真言宗での数珠の持ち方・使い方
続いて、真言宗での数珠の持ち方や使い方を確認していきましょう。
合掌時の数珠の持ち方 |
①親玉を両手の中指にかけ、手のひらで数珠を挟むように手を合わせる ②房は両手の甲に垂らす |
焼香の回数 | 3回 |
焼香の作法 |
①右手の親指・人差し指・中指で抹香をつまむ ②左手を軽く添えて額に押ししただく ③香炉にくべる |
天台宗での数珠の持ち方・使い方
天台宗での数珠の持ち方や使い方は、以下のようになります。
合掌時の数珠の持ち方 |
①人差し指と中指の間に数珠をかける ②房は小指側におき、下に垂らす |
焼香の回数 | 1〜3回 |
焼香の作法 |
①右手の親指・人差し指・中指で抹香をつまむ ②額に押しいただく ③香炉にくべる |
臨済宗・曹洞宗(禅宗)での数珠の持ち方・使い方
最後に、臨済宗・曹洞宗(禅宗)での数珠の持ち方や使い方をご紹介します。
合掌時の数珠の持ち方 |
臨済宗・曹洞宗 ①左手の親指に数珠をかける ②右手にはかけずに合掌する |
焼香の回数 | 臨済宗:1回 曹洞宗:2回 |
焼香の作法 |
曹洞宗 ①右手の親指・人差し指・中指で抹香をつまむ ②額に押しいただく(2回目の焼香は不要) ③香炉にくべる 臨済宗 ①右手の親指・人差し指で抹香をつまむ ②静かに香炉へくべる |
数珠を扱う際の注意点
数珠を取り扱う際にはマナー違反となる扱い方があるため、事前に確認しておく必要があります。以下で、数珠を扱う際の注意点をまとめましたので、それぞれ見ていきましょう。なお、以下で取り上げている注意点は、本式数珠にも当てはまります。
数珠は置きっぱなしにしない
ご葬儀中に席を立つ際、ご自身の席の上に数珠を置きっぱなしにして席を離れるのはマナー違反となります。席を離れる際は、喪服のポケットや持参したバッグにしまうか、あるいはハンカチの上に数珠を置いてから席を離れるようにしましょう。
数珠の共有や貸し借りはしない
数珠をご家族で共有する、または知人・友人と貸し借りするというように、1つの数珠を複数人で扱われる方がいらっしゃいますが、これもマナー違反になります。数珠はご葬儀や法事・法要に参列する際に必ず持参するものではありませんので、数珠を持っていないようであれば数珠なしで参列するようにしましょう。
なお、数珠の作法に関しては、地域や習慣、その家のしきたりなどによって違いが生じることがあります。ご心配な方は、事前に菩提寺や葬儀社に確認しておくと良いでしょう。
ブレスレットなどアクセサリーでの代用はできない
近年は、ファッショナブルな数珠も増えてきました。遠目から見ると、ブレスレットに見えるデザインもあります。しかし、本当のブレスレットを数珠の代用品として使用するのはマナー違反です。ブレスレットはあくまで装飾品なので、ご葬儀の際には数珠として販売されているものを用意しましょう。
数珠に関するQ&A
最後に、数珠に関する質問に回答していきます。ご葬儀へ参列する際や、購入する際の参考にしていただけると幸いです。
数珠を忘れてしまった場合は?
数珠を忘れてしまったときや。時間がないなどの理由で用意が難しければ、数珠なしで参列します。先述したように、数珠はお守りの役割をはたしているため、他人から借りることは望ましくありません。
参列中にひもが切れた場合は?
参列中にひもが切れてしまった場合は、外れてしまった玉を集めて仏具店で修理してもらいましょう。「ひもが切れる=縁起が悪い」と思われがちですが、「悪い縁を断つ」といった意味もあるので、特に慌てる必要はありません。
数珠を普段から身につける場合の作法は、法事とは異なる?
あまり見ないかもしれませんが、「数珠をお守りの代わりとして普段から身につけている」という方も、決してマナー違反ではありません。ただし、数珠には房がついています。もし房が気になるようであれば、ブレスレットの形をした数珠ブレスレットなどに変えると良いでしょう。
まとめ
数珠は、ご葬儀や法要などに欠かせない大切な仏具のひとつです。故人様を弔うといった意味を持っているほか、身につけている本人を守るといった役割もはたしています。正しい使い方を理解し、その場に合った振る舞いをするように心がけましょう。
間違えのない葬儀社の選び方や注意点をはじめ、さまざまな葬儀の知識・マナーを分かりやすくお伝えします。