浄土真宗のご葬儀とは?流れやマナーを分かりやすく解説

日本の仏教にはさまざまな宗派が存在し、ご葬儀の特徴や作法に違いが見られます。浄土真宗は最も信者数が多い仏教宗派といわれているため、儀式のやり方や流れについて気になっている方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、浄土真宗のご葬儀の特徴や流れについて解説し、事前に知っておきたいマナーもあわせてご紹介いたします。
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浄土真宗のご葬儀とは?
浄土真宗のご葬儀は「聞法(もんぼう)の場」として位置付けられています。聞法とは、仏様の教えを聞き学ぶことです。
浄土真宗では「死者は死という事実を身をもって示し、私たちに死を迎える準備を無言で教えている」ととらえています。これを機縁として、ご本尊である阿弥陀如来に感謝し、仏教の教えを学ぶというのが他の宗派と一線を画すポイントです。
浄土真宗の概念
浄土真宗には「即身成仏」という概念が存在し、亡くなった方はすぐに阿弥陀如来の救いにより、極楽浄土へ往生すると考えられています。そのため、浄土真宗では供養の儀式を行ったり、冥土への旅支度をしたりすることはありません。
他の宗派との違い
他の宗派と比較して、浄土真宗は死生観が異なることから、ご葬儀の特徴や作法に違いが見られます。例えば、他の宗派にあって浄土真宗にないものは以下のとおりです。
●末期の水
●戒名・位牌
●枕飯・枕団子
●死装束
●お清めの塩
浄土真宗には即身成仏という概念があるため、上記のような供養の儀式や冥土への旅支度は不要とされています。加えて、死を穢れ(けがれ)ととらえておらず、身体を清めるための塩を使わない点も特徴です。
他の宗派のご葬儀は死者の供養を目的としていますが、浄土真宗のご葬儀は聞法(仏教の教えを学ぶこと)を目的としています。この点は、他の宗派との大きな違いといえるでしょう。
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詳しく見る浄土真宗のご葬儀の流れ
数ある仏教宗派の中で、特に浄土真宗は信者の数が多いため、今後ご葬儀に参列する機会があるかもしれません。いざというときに慌てることがないよう、ご葬儀の流れも確認しておきましょう。
ご臨終からご葬儀までの流れ
浄土真宗のご臨終からご葬儀までの大まかな流れは、以下のとおりです。
1.遺体の安置
2.臨終勤行(りんじゅうごんぎょう)
3.通夜
4.ご葬儀
ご臨終を迎えたら、故人様のご遺体を仏壇のそばに安置します。自宅にご遺体を安置することもできますが、仏壇をお持ちでない場合は、必ず寺院にその旨を伝えましょう。
ご遺体を安置した後は、阿弥陀如来への報恩感謝の儀式である臨終勤行を行います。他の宗派における「枕経」に該当する儀式であり、浄土真宗ではご本尊に対してお勤めを行うのが特徴です。
なお、故人様が生前に法名(戒名にあたる名前)を授かっていない場合、この機会に法名を授かることができます。そしてお通夜・ご葬儀へと続くのが一般的な流れです。
「本願寺派」と「真宗大谷派」の違い
浄土真宗は「本願寺派」と「真宗大谷派」が二大勢力で、双方はご葬儀の内容がそれぞれ異なります。まずは本願寺派のご葬儀の流れから見ていきましょう。
1.ご遺族・参列者入場
2.導師(僧侶)入場
3.開式
4.帰三宝偈(きさんぽうげ)
仏様への帰依を表すお経を唱える
5.路念仏(ろじねんぶつ)
元来「野辺送り」の際に唱えられていたお経を唱える
6.三奉請(さんぶじょう)
諸仏を招き入れる偈文(げもん)を唱える
7.導師(僧侶)焼香
8.表白(ひょうびゃく)
ご葬儀の趣旨を説明する文を読み上げる
9.正信偈(しょうしんげ)
親鸞聖人の著書「教行信証」の中の一節を読経する(正式名称は「正信念仏偈」)
10.焼香
ご家族→ご親族→参列者の順番に焼香をする
11.念仏
南無阿弥陀仏を唱える
12.和讃(わさん)
諸仏と教えをたたえる(和讃は仏教歌謡の一種)
13.回向(えこう)
回向文(ご葬儀や法要の終わりに唱えられるお経)を唱える
14.導師(僧侶)退場
15.閉式
16.喪主の挨拶
17.出棺
※地域や寺院によって内容が異なる場合があります。
本願寺派のご葬儀では、僧侶による読経・焼香が行われ、ご遺族や参列者の焼香へと続きます。本来は、自宅での出棺勤行とご葬儀会場での勤行に分けて行うのが正式ですが、近年では自宅でのご葬儀が減少しているため、斎場でまとめて行うのが通例となっています。続いて、真宗大谷派のご葬儀の流れを見ていきましょう。
1.ご遺族・参列者入場
2.導師(僧侶)入場
3.開式
4.総礼(そうらい)
全員で合掌し、念仏を唱える
5.伽陀(かだ)
諸仏に来場してもらうための声明(しょうみょう)を詠う
6.勧衆偈(かんしゅうげ)
衆生に信心を勧める偈文を唱える
7.短念仏十遍(たんねんぶつじゅっぺん)
南無阿弥陀仏を10回唱える
8.回向(えこう)
回向文を唱える
9.総礼(そうらい)
全員で合掌し、念仏を唱える
10.三匝鈴(さんそうりん・さんそうれい)
儀式に用いられる鈴を鳴らす
11.路念仏(ろじねんぶつ)
元来「野辺送り」の際に唱えられていたお経を唱える
12.表白(ひょうびゃく)
ご葬儀の趣旨を説明する文を読み上げる
13.三匝鈴(さんそうりん・さんそうれい)
儀式に用いられる鈴を鳴らす
14.弔辞
15.正信偈(しょうしんげ)
親鸞聖人の著書「教行信証」の中の一節を読経する(正式名称は「正信念仏偈」)
16.焼香
ご家族→ご親族→参列者の順番に焼香をする
17.短念仏十遍(たんねんぶつじゅっぺん)
南無阿弥陀仏を10回唱える
18.和讃(わさん)
諸仏と教えをたたえる(和讃は仏教歌謡の一種)
19.回向(えこう)
回向文を唱える
20.総礼(そうらい)
全員で合掌し、念仏を唱える
21.導師(僧侶)退場
22.閉式
23.喪主の挨拶
24.出棺
※地域や寺院によって内容が異なる場合があります。
真宗大谷派のご葬儀は、南無阿弥陀仏を10回唱えたり、仏具の鈴を鳴らしたりするなどの特徴があります。本来、自宅での「葬儀式第一」とご葬儀会場での「葬儀式第二」の二部構成で行うのが正式ですが、近年では自宅でのご葬儀が減少しているため、斎場で完結させることがほとんどです。
浄土真宗のご葬儀におけるマナー
浄土真宗のご葬儀には独自のマナーが存在するため、事前に確認しておく必要があります。ここでは、浄土真宗のご葬儀におけるマナーについて分かりやすく解説します。
服装のマナー
浄土真宗のご葬儀では、喪服を着用するのがマナーです。この点は他の宗派と同じですが、門徒に関しては、「門徒式章(もんとしきしょう)」と呼ばれる法具を着用するのが基本となります。
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1.ご本尊の前で一礼して合掌
2.抹香を右手の親指・人差し指・中指でつまむ
3.抹香を額に押しいただかず、香炉にくべる(本願寺派は1回、真宗大谷派は2回)
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浄土真宗の場合、本願寺派と真宗大谷派で数珠の持ち方が異なります。以下の表に、各宗派の数珠の持ち方をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
宗派 | 数珠の持ち方(合掌する際の持ち方) |
---|---|
本願寺派 |
①数珠を二重にする ②合掌した両手の親指と人差し指の間に数珠を挟む ③房を下に垂らす |
真宗大谷派 |
①数珠を二重にする ②親玉を上にして合掌した両手の親指と人差し指の間に数珠を挟む ③房を左側に垂らす |
なお、宗派を問わない「略式数珠」を使用する場合は、数珠を左手の親指と人差し指の間にかけ、輪の中に右手を入れて合掌します。
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詳しく見るお悔やみの言葉のマナー
浄土真宗では亡くなった方は冥土を旅することなく、すぐに仏様になると説いています。そのため、次のようなお悔やみの言葉を使うのはふさわしくありません。
不適切とされているお悔やみの言葉 | 言い換え表現 |
---|---|
冥福を祈る | 哀悼の意を表する |
天に召される | 浄土に往生する |
安らかにお眠りください | 私たちをお導きください |
浄土真宗のご葬儀に限らず、弔事の場で宗教・宗派に適さない言葉を使うのはマナー違反です。故人様やご遺族に失礼のないよう、適切な言葉でお悔やみの気持ちを伝えましょう。
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他の宗派と同様に、浄土真宗でも初七日や四十九日といった法事・法要が行われます。ただし、即身成仏の教えから、追善供養を行う習慣はありません。
浄土真宗における法事・法要は故人様のご冥福を祈るのではなく、この世にいる方が故人様を通じて仏様とのご縁を結ぶ機会と考えられています。
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詳しく見るまとめ
浄土真宗では、ご葬儀を仏教の教えを学ぶ場としてとらえています。死者の供養を目的としていないのは、他の仏教宗派との大きな違いといえるでしょう。
浄土真宗のご葬儀には、独自の儀式やマナーが存在します。本記事の内容も参考に、ご葬儀に関するマナーを少しずつ覚えていきましょう。
間違えのない葬儀社の選び方や注意点をはじめ、さまざまな葬儀の知識・マナーを分かりやすくお伝えします。