ご葬儀でお酒を出すのはなぜ？振る舞うタイミングやマナーを解説

ご葬儀でお酒を出すのはなぜ？

ご葬儀でお酒を出すという風習には、さまざまな意味が込められています。ここでは、弔事におけるお酒の意味や歴史について解説します。

ご葬儀で出すお酒の意味

ご葬儀で出すお酒には「お清め」の意味があるとされています。日本では古来より「お米は生命の源である」といわれており、お米から醸造されるお酒には死がもたらす穢れを遠ざける力があると考えられてきました。

このような背景から、かつて日本では穢れを寄せ付けないために、ご葬儀の際にお米やお酒を大量に摂取していたそうです。その他にも、ご葬儀に出すお酒には死者の霊を慰める、ご遺族の悲しみに寄り添うといった意味もあるといわれています。

ご葬儀で出すお酒の由来・歴史

仏教が伝わる前、日本には「殯（もがり）」という風習があり、人が亡くなってもすぐに埋葬せず、数年ほど喪屋の中でご遺体を安置していました。その間、人々は死者の霊を慰めるため、亡くなった方に食事をお供えしたり、お酒を飲みながら儀式を執り行ったりしたそうです。

仏教が伝来した後、殯の酒食や歌舞は「布施」のような意味を持つようになりました。 布施とは、僧侶や貧窮者などに衣食を施すことで、私欲のない無我の境地に達するという考え方です。

ご葬儀の際に、故人様が遺した財物から料理やお酒を出すことは、仏教の布施にあたる行為であり、やがて故人様の極楽往生を願う行いと考えられるようになりました。このようにして、ご葬儀でお酒を出すという風習が定着したといわれています。

ご葬儀でお酒を出すタイミング

ご葬儀では、以下のタイミングでお酒を出すのが一般的です。

ここからは、上記のタイミングで行われる会食について解説していきます。

お通夜の後

お通夜の後、僧侶や参列者を招いて食事やお酒を振る舞うことを「通夜振る舞い」といいます。通夜振る舞いにはお清めや供養の意味があり、穢れを清めるために日本酒やビールなどを出すのが通例です。

しかし、近年では食事やお酒を用意せず、お菓子やお茶だけで済ませるケースも珍しくありません。加えて、家族葬や直葬の場合、通夜振る舞いを省略することもあります。

ご葬儀（火葬）の後

ご葬儀や火葬の後に行われる会食を「精進落とし」といい、この場でもお清めの意味でお酒を振る舞います。かつて精進落としは四十九日法要の後に行われていましたが、現代では初七日法要の後に行うことが多いです。

また、初七日法要はご葬儀の日に合わせて行うケースが増えてきています。この場合、法要後の会食も兼ねて、食事やお酒を振る舞うのが一般的です。

法事・法要

法事・法要の後には「お斎（おとき）」と呼ばれる食事会を行うことがあります。お斎は故人様を供養するため、そして僧侶や参列者への感謝の気持ちを示すために行うものです。この場でも、穢れを清めるという意味でお酒を振る舞うのが通例となっています。

ご葬儀でお酒を出す際のマナー

弔事におけるお酒には、さまざまなマナーが存在します。ここでは、ご葬儀でお酒を出す際に注意すべきポイントを6つご紹介します。

献杯をする

ご葬儀の場でお酒をいただく際には「献杯」をすることがあります。献杯とは、故人様に敬意を表すための儀礼であり、基本的な流れは以下のとおりです。

慶事の場で行われる乾杯とは異なり、弔事の場で行われる献杯は厳かに行うのがマナーです。加えて、献杯前に食事やお酒をいただくのはマナー違反なので注意しましょう。

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挨拶は手短に済ませる

献杯での挨拶は、手短に済ませましょう。挨拶が長くなってしまうと、参列者に負担をかけてしまうため、一般的には1分前後にまとめるのが望ましいとされています。

忌み言葉・重ね言葉を使わないようにする

弔事の場で不吉な物事を連想させる「忌み言葉」や、不幸が重なることを連想させる「重ね言葉」を使うのは不適切とされています。代表的な忌み言葉・重ね言葉は、以下のとおりです。

なお、忌み言葉や重ね言葉の中には、別の言葉に置き換えられるものもあります。例えば、生きていたころは「お元気なころ」、ますますは「もっと」という言葉に置き換えることが可能です。献杯での挨拶はもちろん、ご遺族にお悔やみの言葉をかけるときや電報を打ったりするときも、忌み言葉・重ね言葉は使わないように気をつけましょう。

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静かに唱和する

先ほども軽く触れましたが、献杯は厳かに行うのがマナーです。そのため、献杯の唱和は控えめな声量で行うようにしてください。

グラスを高く掲げたり、鳴らしあったりしない

乾杯とは異なり、献杯ではグラスを高く掲げたり、鳴らしあったりしません。献杯をするときは、グラスを胸の前あたりに差し出し、静かに唱和するのが正しい作法です。

拍手をしない

ご葬儀や法要の後などに行われる会食には「供養」の意味が込められています。お祝いの席ではないため、献杯の後に拍手をしたり、大きな声を出したりするのは控えましょう。

お供え物としてお酒を渡す場合のマナー

お供え物としてお酒を渡す場合は、のし紙（掛け紙）と結び切りの水引を使用します。水引の色に関しては、お通夜やご葬儀では黒白が一般的です。法事の際に使用する水引の色は地域差があるため、事前に確認しておきましょう。

また、表書きの書き方は宗教宗派や渡すタイミングによって異なります。例えば、故人様が仏教を信仰されていた場合、四十九日までは薄墨で「御霊前」、四十九日以降は濃墨で「御仏前」と書くのが一般的です。相手の方の宗教が分からないときは、「御供」や「御供物」と記載すれば問題ありません。

そして表書きの下には、お供え物を用意した方の氏名を書き入れます。複数で贈る場合は、同格なら右から五十音順に、目上の方がいるときはその方を中心に右から順に並べるのが基本です。4名以上の場合は、代表者の氏名を中央に記載し、その左側に「外一同」や「他一同」などと記載しましょう。

まとめ

ご葬儀でお酒を出すという風習にはお清めの意味があるとされており、故人様の成仏を願う行いとも考えられています。お酒が出されるのはお通夜の後の「通夜振る舞い」、ご葬儀の後の「精進落とし」、法事・法要の後の「お斎」です。いずれも故人様を偲ぶための会食ですので、お酒を飲みすぎたり、大声で騒いだりすることがないよう注意しましょう。