施餓鬼とは?宗派ごとの違いや参加方法、お布施・服装マナーを解説
施餓鬼(せがき)とは、仏教における供養の一つ ですが、その目的や作法について知らないという方も多いのではないでしょうか。中には儀式への参列を検討しており、お布施やマナーについて気になっているという方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、施餓鬼がどのような仏教行事なのか、分かりやすく解説いたします。宗派ごとの違いや参列方法、事前に知っておきたいマナーなどにも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
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施餓鬼とは?
施餓鬼とは、お盆の時期に行われることが多い仏教行事の一つで、正式名称は「施餓鬼会(せがきえ)」といいます。はじめに、施餓鬼の意味や歴史などについて解説していきます。
施餓鬼の意味・行う目的
施餓鬼とは、死後に餓鬼や無縁仏になってしまった方を救済するために行う法会です。仏教には「六道(ろくどう・りくどう)」と呼ばれる6つの世界が存在し、そのうちの一つに「飢餓道」があります。
生前に悪行を働いたり、供養を受けられなかったりした魂は飢餓道に落ち、飢えと渇きに苦しむ亡者(餓鬼)になるとされています。この餓鬼に食べ物や飲み物などの施しを与えて、死者の霊魂を供養するのが主な目的です。
また、霊を鎮める施餓鬼には多大な功徳があり、徳を積むことで自分自身に救いがあるともいわれています。
施餓鬼を行うタイミングはいつ?
施餓鬼を行うタイミングに、明確な決まりはありません。しかしながら、先祖供養とともに行うことで徳を積めると考えられていたためなのか、一般的にはお盆の時期に行うケースが多いようです。
施餓鬼の歴史・由来
施餓鬼の由来は、「救抜焔口餓鬼陀羅尼経(くばつえんくがきだらにきょう)」というお経の中で語られている説話にあるとされています。
ある日、お釈迦様の弟子の一人である阿難(あなん)は、瞑想中に現れた餓鬼に死を予告され、死後は同じ餓鬼になると伝えられました。
阿難がお釈迦様に相談したところ、「お経を唱えながら餓鬼に食べ物を施しなさい」と説かれます。お釈迦様が話されたとおりにすると、餓鬼は空腹を満たして救われ、功徳を得た阿難も寿命を延ばすことができました。
上記の説話がきっかけとなり、餓鬼供養を目的とした儀式が行われるようになったといわれています。
施餓鬼会と盂蘭盆会(お盆)の違い
盂蘭盆会(うらぼんえ)とは、ご先祖様を自宅にお迎えして供養する仏教行事のことであり、一般的には「お盆」と呼ばれています。施餓鬼と混同されがちですが、盂蘭盆会は先祖供養が目的であり、夏の決まった時期に行うことから、双方は全く異なる意味を持つ行事であるといえます。
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浄土宗では、施餓鬼を重要な法会の一つとして考えています。施餓鬼は飢えや渇きで苦しむ亡者の供養につながり、その行為によって多大な功徳を得られるとされているためです。このような背景もあり、浄土宗では盛大に施餓鬼を行うケースも少なくありません。
浄土真宗
浄土真宗には「亡くなった方はすぐに極楽浄土へ往生する」という教えがあります。そのため、基本的には施餓鬼を行いません。
天台宗
浄土宗と同様に、天台宗も施餓鬼を重要視している宗派の一つです。数多くの寺院で大規模に実施されていることから、天台宗における施餓鬼の重要性が伺えます。
真言宗
真言宗では「餓鬼への施しは毎日行うのが良い」とされており、他の宗派に比べて施餓鬼の実施回数が多いという特徴があります。儀式を執り行う際、護摩(ごま)を焚いて祈祷する点も真言宗ならではの特徴です。
臨済宗・曹洞宗
臨済宗や曹洞宗などの禅宗では、施餓鬼のことを「施食会(せじきえ)」と呼ぶことがあります。これは施す側と施される側に、身分の違いがあるべきではないという考えからきているものです。
また、禅宗には「生飯(さば)」と呼ばれる施食作法があり、日常生活に取り入れられています。生飯とは、食事の際に七粒ほどの米粒を取り分け、屋根に撒くなどして餓鬼や無縁仏に施しを与える作法です。
日蓮宗
日蓮宗においても、施餓鬼は重要な法会の一つです。「開祖である日蓮聖人が亡霊としてさまよう魂を川施餓鬼で成仏させた」という逸話も残っており、現代でも同様の儀式が行われています。なお、川施餓鬼とは、川辺や船上にて行う施餓鬼のことです。
施餓鬼に参加する方法
施餓鬼の参列方法には、主に以下の2つがあります。
●自宅に僧侶を招いて行う
●寺院の行事に参列する
寺院に施餓鬼を行いたい旨を伝えれば、自宅で法要を行えます。どのタイミングで依頼しても問題ありませんが、僧侶のスケジュールによっては都合がつかない場合もあるため、早めに準備を進めておくと安心です。
また、寺院で行われる施餓鬼に参列するのも一つの方法です。法要の詳細については、寺院から届く案内や、各寺院の公式ホームページなどでご確認ください。
施餓鬼の流れ
施餓鬼の内容は寺院によって違いが見られますが、大まかな流れは以下のとおりです。
1.受付(お供え物やお布施などのお渡し)
2.会食(またはお弁当が振る舞われる)
3.僧侶による法話
4.法要(読経や焼香など)
5.卒塔婆(そとば)の受け取りとお墓参り
寺院によっては、人々の交流の場として食事会を開いたり、ゲストを招いてトークイベントを実施したりすることもあります。上記はあくまで一例ですので、法要について何か気になることがあれば、事前に確認しておくと良いでしょう。
施餓鬼におけるお布施について
施餓鬼に参列する場合、僧侶への感謝の気持ちを込めてお布施を渡すのが通例です。ここからは、お布施の金額の目安や基本的なマナーについて解説していきます。
金額相場
施餓鬼におけるお布施の金額は、3,000〜10,000円が相場とされています。加えて、卒塔婆(そとうば・そとば)を立ててもらう場合は3,000〜10,000円程度、自宅に僧侶をお招きする場合は5,000〜10,000円程度を追加でお渡しするケースが多いです。
なお、施餓鬼の金額相場は寺院や地域によって異なります。あらかじめ金額が決まっている寺院もあるため、事前に確認しておきましょう。
のし袋の選び方
お布施は「奉書紙(ほうしょし)」と呼ばれる和紙に包むのが基本です。もし用意できない場合には、白無地の封筒やのし袋(不祝儀袋)に包んでも問題ありません。
また、お布施は僧侶へのお礼として渡すものですので、基本的に水引きは不要です。水引きに関しては、寺院や地域ごとにルールが存在する場合もあるため、前もって確認しておきましょう。
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特に寺院からの指定がない場合、表書きには「御布施」または「お布施」と書きます。寺院によっては「御施餓鬼料」や「冥加料」などと書く場合もあるため、それぞれのルールに従うようにしてください。
また、表書きの下部にはご自身の名前を記載し、裏面には包んだ金額や住所・氏名を記載します。お布施を包む袋に文字を入れる際は、濃墨の毛筆や筆ペンを使用するのが一般的です。
お布施の渡し方
ご葬儀のときと同様に、お布施は袱紗(ふくさ)に包んで持ち歩き、お渡しする直前に取り出すのがマナーです。僧侶に直接手渡しするのは失礼にあたりますので、切手盆や袱紗の上に乗せてから渡すようにしましょう。
ただし、寺院で行われる施餓鬼に参列する場合、受付でお札をそのままお渡しするケースもあります。お布施の渡し方について気になることがあれば、寺院に問い合わせてみると良いでしょう。
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お布施に関するマナー以外にも、いくつか注意すべき点があります。最後に、事前に知っておきたいマナーを3つの項目に分けて解説しますので、そちらもあわせてご覧ください。
服装
施餓鬼に参列する際の服装は、略喪服(平服)で構わないとされています。普段着で参列することも可能ですが、男性はスーツやシャツ、女性はワンピースなどを着用するのが無難です。
また、アクセサリーやマニキュア、髪飾りなど派手な装飾は避けましょう。施餓鬼に参列する際は、供養の場にふさわしい服装が求められます。
挨拶
施餓鬼では法要の前後にお布施を渡しますが、その際には「本日はどうぞよろしくお願いいたします」「本日はありがとうございました」などと挨拶をするのがマナーです。他の場面においても、必要に応じて僧侶や参列者に挨拶をするのは基本的なマナーといえます。
持ち物
当日に必要な荷物は、数珠とお布施の2つです。場合によっては御塔婆料や御車代、お供え物が必要になることもあります。
まとめ
施餓鬼とは、死後に餓鬼や無縁仏になってしまった方を救済するために行う法会です。一般的に、お盆の時期に行うことが多いですが、どのタイミングで行っても問題ありません。施餓鬼に関するマナーは寺院や地域によって異なるため、参列する前に確認しておくことをおすすめします。
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