三途の川とは?六文銭・賽の河原・石積みの意味、渡り方について解説
「三途の川」の存在こそ知っているものの、具体的にどのような場所なのか知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。仏教では「死後に三途の川を渡る」と考えられているため、基本的な知識は身につけておきたいところです。
本記事では、三途の川がどのような場所なのか、分かりやすく解説していきます。六文銭や賽の河原、石積みの意味などにも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
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三途の川とは?
三途の川とは、あの世とこの世の境界にあるとされる川のことです。人は亡くなると、この川を渡って天国(極楽浄土)や地獄に向かうといわれています。 まずは、三途の川の基礎知識から確認していきましょう。
死後7日目に渡るとされる川のこと
三途の川はあの世とこの世の境界線であり、命日から7日目のタイミングで渡るとされています。これは死者の魂が初七日の日に、三途の川のほとりに到着すると考えられているため です。
仏教の教えによると、死者の行き先を決める審判が四十九日までの間、7日ごとに行われます 。そして最初に審判が下されるのが、初七日にあたる死後7日目です。 十王(死者の罪業を裁く10人の王)の一人である秦広王(しんこうおう)によって裁かれた後、死者の魂は三途の川を渡り始めます 。
なお、浄土真宗では「人は亡くなるとすぐに極楽往生する」とされており、冥土への道の概念が存在しません。 同じ仏教であっても、死に対する考え方は宗派によって異なります。
三途の川を渡るときに必要な「六文銭(ろくもんせん)」
平安時代の末期になると、「三途の川を渡るときは渡し船に乗る」と考えられるようになりました。その渡し賃が「六文銭」 です。
三途の川には、番人である鬼の夫婦がいるとされています 。この番人に六文銭を払わなければ、衣服が奪われてしまうといわれているため、お金を棺に納めるという風習が生まれました 。
かつては本物のお金を使用していましたが、現代では六文銭を構成する一文銭が使われていません。加えて、法律の観点から本物のお金を棺に納めることはできないため、紙製の冥銭を用いるのが通例 となっています。
三途の川の手前にある「賽の河原(さいのかわら)」
三途の川の手前には「賽の河原」と呼ばれる場所があり、幼くして亡くなった子どもたちの霊が集まるといわれています。ここでは、後述する石積みが行われ、そこに地蔵菩薩が現れて子どもたちを解放するという言い伝えがあります 。
賽の河原で行う「石積み」
親よりも先に亡くなってしまった子どもは、賽の河原で「石積み」を行っていると考えられています。諸説ありますが、仏教では親よりも先に亡くなることは罪とされており、その罪滅ぼしとして河原で石を積み、仏塔を作らないといけないというのが通説 です。
親が子どもの死を悲しみ苦しんでいる間は、鬼がやってきて完成目前の塔を壊してしまうため、子どもたちは石を積み続けなければなりません。その苦しみから解放するため、子どもたちの前に地蔵菩薩が現れ、成仏に導いてくれるといわれています 。
仏教における三途の川の意味・由来
仏教における三途の川は、「輪廻転生(りんねてんしょう)」に由来します。輪廻転生とは、人は6つの世界(六道)への生まれ変わりを繰り返すという仏教の教えの一つ です。
六道のうち、地獄道・餓鬼道・畜生道の3つの世界を「三悪道」といい、仏教における三途の川の「三途」はこの3つの世界を指しています。三途を分かつ川として、三途の川と呼ばれるようになったというのが仏教における由来 です。
なお、三途の川の名前の由来は、仏教の教えではなく「川の渡り方が三通りあるから」とする説が最も有名 です。
人によって異なる、三途の川の渡り方
三途の川の渡り方は、生前の罪の重さによって変わるとされています 。諸説ありますが、一般的な考え方は以下の通りです。
罪の重さ | 三途の川の渡り方 |
---|---|
善人 | ・金銀七宝で作られた橋を渡る ・安全かつ楽に川を渡りきれる |
罪の軽い罪人 | ・山水瀬(さんすいせ)と呼ばれる浅瀬を渡る ・橋を渡ることはできないが、川を自力で渡ることはできる |
罪の重い罪人 | ・下流にある強深瀬(ごうしんせ)または江深渕(こうしんえん)と呼ばれる難所を渡る ・波が高く岩も流れてくるため、途中で命を落としてしまう(川を渡りきるまでは何度も生き返る ) |
生前の罪が軽いほど川を渡る難易度は低くなります。余談ですが、三途の川の川幅は約400kmもあるといわれており、これは東京から神戸までと同じくらいの距離です。
日常で「三途の川が見える」とどうなる?
日常で見える三途の川は、何かを暗示しているといわれています 。この世で直視することはできませんが、三途の川の夢を見た場合、吉夢なのか凶夢なのかは、その内容や印象で判断できるようです 。
例えば、三途の川を見ている夢は、日常の中に危険が潜んでいることを暗示しているといわれています 。もしも三途の川の夢を見て、その内容が何を示しているのか気になる場合は、スピリチュアルな世界に精通した方に相談してみるのも一案です。
日本で実際に存在する「三途の川」
日本には、実際に「三途の川」と呼ばれる川が存在します。そのうちの一つが、青森県むつ市にある正津川です。この川の上流には日本有数の霊場である恐山があり、賽の河原と呼ばれる場所では数多くの石積みが見られます 。
また、群馬県甘楽 郡(かんらぐん)には利根川水系の一級河川が流れていますが、その川の名が「三途川」というのです。川の近くにお堂があり、ここには三途の川の番人である「奪衣婆(だつえば)」が祀られています。
海外における、三途の川とよく似た言い伝え
海外にも、三途の川とよく似た言い伝えがあることをご存知でしょうか。ここでは、有名な言い伝えをご紹介しますので、そちらもあわせてご覧ください。
古代インドのヴァイタラニー川には、カミソリのような細い橋が架かっています。川の温度は高く、遺骨や髪、血などが流れており、腐臭が漂っているそうです。そのため、この川は「地獄の入り口」と言い伝えられています。
ギリシャ神話によると、あの世とこの世の境界には「ステュクス川」が流れているとされています。この川には渡し守りがいて、お金を取って死者の魂を冥界へ渡していました。そのため、かつてギリシャでは死者の口に1オボロスの硬貨を咥えさせたそうです。
まとめ
今回は、三途の川の概要や言い伝えについて解説しました。浄土真宗などを除く仏教には、「死後に三途の川を渡る」という考え方があり、その渡り方や行き先は現世の行いによって決まるといわれています。本記事が疑問点の解消に役立ち、またご自身の行動を見つめるきっかけとなれば幸いです。
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