【例文つき】遺書の書き方とは?遺言書との違いやタイミング、形式、保管場所についても
「もしものときのために遺書を書きたい」と考えているものの、書き方が分からず、二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか。遺書には法的な制約がないため、誰でも簡単に作成することが可能です。
本記事では、遺書の書き方を例文つきで解説し、タイミングや保管場所についてもご説明します。遺言書との違いにも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
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遺書と遺言書の違いとは?
遺書を書くことを検討している方の中には、「遺言書との違いが分からない」という方も多いのではないでしょうか。双方は似て非なるものですので、この機会に違いを確認しておきましょう。
遺書とは?
遺書とは、自分の意思を誰かに伝えるための私的文書です。書式や内容に決まりはなく、後述する遺言書のような法的効力はありません。
便箋に書いた手紙をはじめ、ビデオメッセージや音声テープなども遺言の一種で、あくまでも個人的なメッセージという扱いになります。そのため、一般的には財産分与について言及することはありません。
遺言書とは?
遺言書とは、民法で定められた厳格な手続きにて作成された法律文書です。書式をはじめ、作成方法や内容も細かく規定されており、すべての要件を満たすことで法的効力が発生します。
遺書と遺言症の最大の違いは、法的な制約があるかどうかです。遺言書はいわば財産の分け方についての意思表示であり、相続に関するトラブルを未然に防ぐ役割があります。
エンディングノートとは?
エンディングノートとは、万が一のことがあったときに備えて、自分に関するさまざまな情報を書き記しておくためのノートです。書式や内容に決まりはなく、ご葬儀の希望やもしものときに連絡してほしい方の電話番号、これからやるべきことなど、人によって書く内容は異なります。
遺書とエンディングノートは似ていますが、遺書のほうが遺言としての意味合いが強いです。ちなみに、エンディングノートは人生の終わりに備え、自分の思いや残されるご家族のために必要な情報を書き記すことから、別名「終活ノート」とも呼ばれています。
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遺書を書くタイミングに、明確な決まりはありません。したがって、ご自身がしたためたいと考えたときがベストなタイミングといえるでしょう。人生は何が起こるか分からないため、遺書を書くのであれば、早いうちに作成することをおすすめします。
遺書の形式
遺書に決まった形式はありませんが、一般的には手紙や動画で残す方が多いです。手紙には手書きならではの温もりがあるため、気持ちがより伝わりやすいでしょう。動画も気持ちが伝わりやすく、生前の姿を残すことができるため、ご家族にとって大切な宝物になるはずです。
遺書の書き方
遺書には書式や内容の決まりがないため、「どのように書けばいいんだろう」と悩んでしまう方は少なくありません。ここからは、遺書の書き方について詳しく解説していきます。
遺書に書く内容
遺書に書く内容に決まりはないため、基本的にはご自身が伝えたい内容で問題ありません。ここでは、年代別に書くことを検討すべき事柄をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
年代 | 遺書の内容 |
---|---|
20代 | ・スマートフォンのパスワード ・利用しているサービスのID ・親しい友人・知人の連絡先 |
30代 | ・スマートフォンのパスワード ・利用しているサービスのID ・親しい友人・知人の連絡先 |
40代 | ・スマートフォンのパスワード ・利用しているサービスのID ・親しい友人・知人の連絡先 ・持病や既往歴 |
50代以上 | ・持病や既往歴(過去の病歴) ・人生の終末についての希望 ・高齢になったときの施設 ・ご葬儀についての希望 |
20代・30代の方が遺書を書くのであれば、ご自身の身の回りの情報について記載すると良いでしょう。ご家族が知らない情報を記しておくことで、万が一のことがあったときもスムーズに対応しやすくなります。
40代の方は身の回りの情報のほか、持病がある場合はその旨を記載しておくのがおすすめです。健康状態に関する情報を残しておくことで、場合によっては死因の特定に役立つ可能性があります。
50代以上になると、老後の生活や人生の終末について考える機会も増えてくるでしょう。万が一に備えて、ご高齢になったときの施設やご葬儀の希望などを記載しておくと安心です。
遺書の例文
遺書を書く際は、「誰に向けて書くのか」「何を伝えたいのか」という点を意識することで、読み手にとってより理解しやすい文章に仕上がります。ここでは、遺書の例文をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
遺言を書いておきます。万が一のことが起きたら、下記の人に連絡してください。
・会社…TEL:〇〇-〇〇-〇〇 / 部署〇〇
・大家さん…TEL:〇〇-〇〇-〇〇
・親友の〇〇君…TEL:〇〇-〇〇-〇〇
家族へ
かけがえない時間をありがとう。
空の上から見守っています。
〇〇年〇月〇日 〇〇(遺書を書いた日付と自分の名前)
お母さんへ
今の時代、いつ何が起こるか分からないから、遺書を書いておきます。
私にもしものことがあったら、下記のことをお願いします。
金庫の中に通帳が入っています。金額は少ないけど、生活に役立ててね。(※鍵の番号はお父さんの命日です。)
下記の人に連絡をお願いします。
・会社…TEL:〇〇-〇〇-〇〇 / 部署〇〇
・大家さん…TEL:〇〇-〇〇-〇〇
・親友の〇〇ちゃん…TEL:〇〇-〇〇-〇〇
お父さんが亡くなってからいろいろ大変なこともあったけど、お母さんのおかげで何とか頑張ってこれました。
今まで私を大切に育ててくれてありがとう。
お父さんとお母さんの子どもでいれたこと、本当に幸せです。
突然のことで悲しませてしまうかもしれないけど、たくさん笑っていてね。
そして長生きしてください。
私も笑って天国から見守っています。
大好きなお母さんへ
本当にありがとう
〇〇年〇月〇日 〇〇(遺書を書いた日付と自分の名前)
遺書の保管場所
せっかく遺書を書いても、相手に渡らなければ意味がありません。そのため、誰かに見つけてもらえるような場所に保管しておくことが大切です。ちゃんと見つけてもらえるか心配な方は、遺書の保管場所を知らせるメモを残したり、信頼できる方に「何かあったときはお願いします」と託したりしておくのもおすすめです。
若いうちに、法的拘束力のある遺言書を書くのがおすすめ
ご自身の思いや決断が法的に有効になるようにしたい場合は、遺書ではなく、法的拘束力のある遺言書を作成する必要があります。遺言書はご高齢になったときに書くものと思われがちですが、人生の終わりはいつ訪れるのか分からないため、若いうちから早めに作成しておくことが大切です。
遺言書には被相続人が自筆で書く「自筆証書遺言」、公証人が遺言者の真意を文章にまとめる「公正証書遺言」、封印した遺言書を公証役場に持ち込む「秘密証書遺言」の3種類があります。今回は、最も簡単で費用を抑えられる自筆証書遺言について詳しく解説します。
自筆証書遺言の要件
自筆証書遺言は作成のしやすさに魅力がありますが、厳格な要件が定められているので注意が必要です。満たすべき要件として、以下の5つが挙げられます。
●遺言者本人が全文を自筆で書く(財産目録以外)
●作成した日付を明記する
●氏名を自筆で書く
●印鑑を押す
●訂正のルールを守る(訂正部分に取り消し線を引いて印鑑を押す)
自筆証書遺言の要件は、民法968条で「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない 」と定められています。したがって、上記の5つは最低限守らなければならないルールといえます。
自筆証書遺言が無効になる場合
前述のとおり、自筆証書遺言は全文が自筆で書かれていることが条件であるため、パソコンを使って書いた場合は無効となります。加えて、日付・著名・押印がない場合や訂正方法が間違っている場合など、内容に不備があることで無効になるケースも多いです。
自筆証書遺言の書き方
ここでは、自筆証書遺言の書き方について解説します。基本的な流れは以下のとおりです。
①財産を把握するための書類を集める
遺言書を作成するにあたって、まずはどのような遺産があるのか把握する必要があります。事前準備として、不動産の登記簿や預貯金通帳など財産に関する資料を集めることから始めましょう。
②誰に何を相続させるのか明記する
ご自身の遺産を把握したら、誰に何を相続させるのか分かりやすく記載します。例えば、長男には「〇〇銀行〇〇支店 定期預金 口座番号〇〇」、次男には「〇〇株式会社の株式 数量〇〇株」というように、誰から見ても判断できるように記載することが大切です。
③日付を明記する
自筆証書遺言には相続内容だけではなく、作成した日付も記載しなければいけません。日付は正確に書く必要があり、「〇〇年〇〇月〇〇日」と記載するのが一般的です。遺言書が複数ある場合、新しい日付のものが効力を持ちます。
④署名して印鑑を押す
最後に、遺言者の氏名を記載し、印鑑を押します。使用する印鑑は認印でも構いませんが、実印のほうが信用性が高いのでおすすめです。
自筆証書遺言の文例
ここでは、先ほど解説した自筆証書遺言の書き方を踏まえて、文例をご紹介します。以下の文例も参考に、ご自身に合った方法で作成してみてください。
遺言書
第1条
私は、私が有する不動産を、私の配偶者〇〇に相続させる。
第2条
私は、私が有する金融資産のうち500,000円を一般財団法人〇〇(〇〇県〇〇市〇〇町〇〇)に遺贈し、その残余を配偶者〇〇に相続させる。
第3条
私は、前条まで記載した財産を除く、一切の財産を配偶者〇〇に相続させる。
第4条
私は、私の本遺言の執行に関する費用及び債務を配偶者〇〇に負担させる。
第5条
私は、第3条を除く、本遺言書の財産に関する遺言執行者として〇〇を指定する。
<付言事項>
一般財団法人〇〇への遺贈使途は、〇〇とする。
日付:〇〇年〇〇月〇〇日
氏名:〇〇
印
遺言書
遺言者〇〇は、以下の通り遺言する。
1. 妻〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)に、次の財産を相続させる。
(1)土地
所在 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇
地番 〇〇番
地目 宅地
地積 〇〇㎡
(2)建物
所在 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇
家屋番号 〇〇番種類
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 〇〇㎡ 2階 〇〇㎡
2. 長男〇〇に以下の遺言者名義の預貯金を相続させる。
・〇〇銀行〇〇支店 定期預金 口座番号〇〇
・〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇
3. 上記の記載のない財産については、すべて妻〇〇に相続させる。
4. 本遺言書の遺言執行者として長男〇〇を指定する。
令和〇〇年〇〇月〇〇日
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇
遺言者 〇〇 印
弁護士などの専門家からサポートしてもらうのがおすすめ
手軽に作成できる自筆証書遺言ですが、自己判断で作成した結果、無効になってしまったというケースは少なくありません。加えて、遺言書の内容などが原因でトラブルになることも多いため、心配な方は弁護士などの専門家にサポートしてもらうのがおすすめです。
まとめ
遺書とは、自分の思いをご家族や親しい友人などに伝えるための私的文書です。書き方に決まりはなく、気持ちの変化や内容の変更があれば、何度でも書き直すことができます。
最近では人生100年時代ともいわれていますが、人生はいつどこで何が起こるか分かりません。万が一のときに備えて、この機会に遺書を作成してみてはいかがでしょうか。
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