曹洞宗のご葬儀とは?特徴や流れ、お布施などのマナーについて解説
仏教にはさまざまな宗派が存在し、各宗派によってご葬儀を行う目的や儀式の内容に違いが見られます。そのなかでも曹洞宗のご葬儀は、ほかの宗派では見られない特徴がありますので、事前に把握しておきたいところです。
本記事では、曹洞宗のご葬儀の特徴や流れについて詳しく解説します。焼香やお布施などの基本的なマナーも紹介しますので、仏事の知識としてお役立てください。
コンテンツ
曹洞宗とは?
曹洞宗とは、中国から伝えられた仏教の一派であり、臨済宗・黄檗宗(おうばくしゅう)と並ぶ「日本三禅宗」の一つに数えられます。ご葬儀の内容を確認していく前に、まずは曹洞宗に対する知識を深めておきましょう。
曹洞宗の歴史
今から800年ほど前の鎌倉時代、中国の宋にて修行を積んだ道元禅師(どうげんぜんじ)が帰国し、日本に禅の教えを伝えました。そして道元禅師から数えて四代目となる瑩山禅師(けいざんぜんじ)により、曹洞宗は日本全国に広まっていくことになります。
現在に至るまで、廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)が断行されるなど厳しい時代もありましたが、さまざまな危機を乗り越えて日本三大禅宗の一つにまで発展しました。
曹洞宗の教え
曹洞宗の教えの根幹は、坐禅にあります。これはお釈迦様が坐禅の修行に精進し、悟りを開いたことに由来するものです。
曹洞宗の坐禅は「只管打坐(しかんたざ)」で、坐禅をすることそのものが仏の姿であり、悟りの姿であるという教えを説いています。臨済宗や黄檗宗は悟りを得るために坐禅を行いますが、曹洞宗は坐禅と悟りを一体のものと考えているのが特徴です。
曹洞宗のご葬儀の特徴
曹洞宗とほかの宗派を比べると、死に対する考え方や儀式の内容に違いが見られます。ここからは、曹洞宗のご葬儀の特徴について解説していきます。
故人様は仏の弟子となる
曹洞宗のご葬儀は、故人様が仏の弟子になるために行うものとされています。仏の弟子になるには戒名や戒法を授かる必要があるとされており、ご葬儀のなかで「授戒」という儀式を行うのが通例です。
鳴り物を使った「鼓鈸三通(くはつさんつう)」の儀式
鳴り物を使った「鼓鈸三通(くはつさんつう)」という儀式を行うのも、ほかの宗派にはない特徴です。曹洞宗では仏具である太鼓などを打ち鳴らすことで、故人様の魂が仏へと導かれると考えられています。
曹洞宗のご葬儀でのお経・仏具について
曹洞宗のご葬儀では、「修証義(しゅしゅうぎ)」や「般若心経(はんにゃしんぎょう)」などのお経がよく読まれています。臨終後に唱えるお経については、お釈迦様の遺骨を礼拝する内容から始まる「舎利礼文(しゃりらいもん)」などが読まれることが多いです。
また、先ほど解説した鼓鈸三通の儀式を行う際には、次のような仏具(鳴り物)が使用されます。
●鐃祓(にょうはち)・妙鉢(みょうはち)
●引鏧(いんきん)
●太鼓
鐃祓・妙鉢は西洋楽器のシンバルに似た仏具であり、引鏧は手で持てる小さな鐘のような仏具です。太鼓を含めた3つの仏具の音から「チン・ドン・ジャラン」と表現されることもあります。
曹洞宗のご葬儀の流れ
曹洞宗のご葬儀の流れは、ほかの宗派に比べて特徴的です。以下では、一般的な儀式の流れを簡単に解説していきます。
①剃髪
はじめに、故人様を仏の弟子とするため、導師(最も重要な役目をする僧侶)が故人様の髪を剃り落とします。現代の日本では、剃髪の真似をするのが一般的です。
②授戒
次に、故人様に戒名や戒法を授ける「授戒」という儀式を行います。授戒を構成する儀式は、以下のとおりです。
授戒を構成する儀式 | 概要 |
---|---|
懺悔文(ざんげもん) | 生涯で犯した罪を反省する |
酒水(しゅすい) | 清き水を手向ける |
三帰戒文(さんきかいもん) | お釈迦様の教えを守り、仏門に帰依することを誓う |
三聚浄戒(さんじゅうじょうかい)・十重禁戒(じゅうじゅうきんかい) | 導師が法性水を用意し、位牌や自らの頭に注ぐ |
血脈授与(けちみゃくじゅよ) | 血脈を霊前に供える(血脈:お釈迦様から故人様まで繋がる法の系図のこと) |
③入棺諷経(にゅうかんふぎん)
授戒を終えた後、故人様のご遺体を棺に納める「入棺諷経」という儀式を行います。しかし、現代のご葬儀ではすでに入棺が済んでいるため、「回向文(えこうもん)」と呼ばれるお経が読み上げられます。このタイミングで焼香を行うのが一般的です。
④龕前念誦(がんぜんねんじゅ)
焼香後、邪気を払うために龕前念誦が読経され、先ほど紹介した鼓鈸三通の儀式へと続きます。
⑤挙龕念誦(こがんねんじゅ)
挙龕念誦とは、故人様を火葬に付す前に行う最後の儀式のことです。この儀式では故人様の成仏を願い、「大宝楼閣陀羅尼(だいほうろうかくだらに)」を唱え、仏具を鳴らす鼓鈸三通を行います。
⑥引導法語
挙龕念誦の後、故人様を仏の世界へと導くため、導師が故人様の生涯を漢詩で表します。この儀式を引導法語といい、たいまつを模した仏具や線香を使い、円を描いて故人様に引導を渡すのが特徴です。
⑦山頭念誦(さんとうねんじゅ)
山頭念誦とは、故人様の仏性の覚醒を祈願し、お経を読み上げる儀式のことです。本来は斎場から火葬場へ向かう際に行うものでしたが、近年では出棺の前に行うのが通例となっています。
⑧出棺
すべての儀式が終了したら、出棺へと進みます。出棺の際には再び回向文を唱えたり、鼓鈸三通を行ったりして故人様をお見送りします。
曹洞宗のご葬儀におけるマナー
最後に、曹洞宗のご葬儀におけるマナーについて解説します。ご遺族やほかの参列者に不快な思いをさせないためにも、事前に基本的なマナーを把握しておきましょう。
服装
曹洞宗のご葬儀では、喪服を着用するのが一般的です。子どもの服装に関しては、園や学校の制服がある場合は、そちらの制服が正装となります。制服がない場合は、黒・紺・グレーといった落ち着いた色でまとめれば、周囲に失礼な印象を与えることはありません。
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曹洞宗のご葬儀における焼香の作法は、以下のとおりです。
●焼香をあげる回数は2回
●1回目は右手の親指・人差し指・中指で抹香をつまみ、左手を軽く添えて額の高さに押しいただき、香炉にくべる
●2回目は額に押しいただかずに香炉にくべる
1回目と2回目では作法が少し異なりますので、間違えないよう注意しましょう。
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数珠は、曹洞宗のご葬儀に参列する際に必要な仏具です。数珠には、本式数珠と略式数珠の2種類がありますが、どちらを用いても問題ありません。
また、合掌時の数珠の持ち方は宗派によって異なります。曹洞宗では左手の親指に数珠をかけ、右手を添えるようにして合掌するのが基本です。
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お布施の金額に明確な決まりはありませんが、曹洞宗のご葬儀においては200,000〜600,000円の範囲で検討される方が多いようです。地域や寺院の考え方、戒名の位によっても金額相場は変わってきますので、心配な方は菩提寺に問い合わせてみると良いでしょう。
また、お布施は奉書紙(ほうしょし)に包むのが正式な方法ですが、無地の白い封筒を使用しても問題ありません。表書きには「御布施」「お布施」などと記し、下段には喪主のフルネームまたは家名を記入しましょう。
香典と同様に、お布施も袱紗に包んで持ち運び、渡す直前に取り出すのがマナーです。お渡しするタイミングに合わせて「この度の葬儀につきまして、お世話になります」「本日はありがとうございました」といった言葉を添えることで、より丁寧な印象を与えられるでしょう。
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曹洞宗のご葬儀では、授戒や鼓鈸三通などのさまざまな儀式が行われます。事前に儀式の内容や流れを確認しておけば、当日に慌てることもなく、より穏やかな気持ちで故人様をお見送りできるでしょう。
ほかの宗派を信仰されている方も、曹洞宗のご葬儀に参列する機会があるかもしれませんので、いざというときに備えて知識を深めておくと安心です。
間違えのない葬儀社の選び方や注意点をはじめ、さまざまな葬儀の知識・マナーを分かりやすくお伝えします。