頭北面西とは?意味や読み方、北枕との違い、宗教ごとの慣習について解説
頭北面西は、ご葬儀における慣習の一つであり、日常生活の中でよく耳にする「北枕」の由来となっている言葉です。しかしながら、ご葬儀に関する専門的な言葉であることから、その意味や読み方について知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、頭北面西の意味や読み方をはじめ、各宗教における慣習についても詳しく解説していきます。
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頭北面西とは?
頭北面西の読み方は「ずほくめんさい」です。まず、頭北面西がどのようなものなのかご説明していきます。
頭を北側、顔を西側に向けて安置すること
頭北面西は、故人様の頭を北側に向け、顔を西側に向けて安置することを指す言葉です。正式には「頭北面西右脇臥(ずぼくめんさいうきょうが)」と呼びます。
後ほど詳しく解説しますが、頭北面西はお釈迦様の逸話から生まれた慣習で、古くからご葬儀における大切な儀式として受け継がれてきました。この慣習は「故人様が無事に極楽浄土へ辿り着けますように」というご遺族の願いを届けるものとされています。
北枕との違い
現代のご葬儀においても故人様の頭は北側に向けられますが、顔は西側ではなく、上に向けられることが多くなりました。一般的に、この姿勢を北枕と呼びます。
頭北面西と同様に、北枕もお釈迦様が入滅した際の姿勢に由来するものですが、双方にはご遺体を安置する際の顔の向きが異なるという違いがあります。
頭北面西の由来
日本では当たり前のように行われてきた頭北面西ですが、この慣習はどのようにして生まれたのでしょうか。ここでは、頭北面西の由来や今日における意味合いについて解説します。
「涅槃図(ねはんず)」に由来している
頭北面西は、寺院などで目にする涅槃図に由来します。涅槃図とは、仏教の開祖である釈迦の、最後の姿が描かれている画図(がと)のことです。
この画図には頭が北側に、顔が西側に向いて横たわった釈迦の姿が描かれています。つまり、お釈迦様が入滅し、悟りを開いて永遠になった瞬間を表しているのです。その姿に習い、故人様をお釈迦様と同じ向きにして安置するという慣習が生まれました。
今日における頭北面西の意味合い
頭北面西には「故人様が無事に極楽浄土へ辿り着けますように」という願いが込められています。ご遺体を安置する際に、お釈迦様の入滅時と同じ姿勢にすることで、悟りの境地に至れるよう祈っているのです。
なお、今日では故人様の頭を北側、もしくは住宅の事情で北向きにできない場合は西側に向け、顔は上向きにするというのが一般的です。加えて、故人様の顔には白い布がかけられます。
頭北面西のやり方は宗教によって異なる
古くから伝わる頭北面西ですが、宗教によってご遺体の安置方法は異なります。それでは、宗教ごとの慣習についても確認していきましょう。
仏式における頭北面西のやり方
仏式のご葬儀では頭北面西の姿勢で安置するのが一般的です。そしてご遺体の近くには枕飾りとして、香炉やお線香、花瓶などが置かれます。
ただし、寺院の中には安置されたご本尊をもとに、ご遺体の向きを決める方法を採用しているところもあるようです。また、地域や会場によってご遺体の安置方法は異なりますので、気になる方は葬儀社のスタッフに尋ねてみましょう。
神式における頭北面西のやり方
神式のご葬儀では、故人様の頭を北側に向けるのが一般的です。神道では北と西が上座となり、北を最上位とする考えから、頭を北向きにして安置する「枕直し」が主流となっています。
枕直しは、神道において古くから伝わる大切な慣習の一つです。故人様の頭を北側に向けるほか、顔に白い布をかけたり、合掌した手を胸元に置いたりします。
キリスト教では頭北面西の慣習はない
キリスト教に関しては、ほかの宗教とは違って頭北面西の慣習がありません。そのため、ご遺体を安置する際に、頭や顔の向きにこだわる必要はないといえます。
また、キリスト教には枕飾りの慣習もありませんが、昨今ではご遺族や教会の意向もあり、同様の儀式が執り行われるケースが増えました。小さな台が設置され、十字架や聖書、パンなどが飾られる場合があることも念頭に置いておきましょう。
まとめ
頭北面西は、お釈迦様の逸話に由来する日本古来の慣習で、現代のご葬儀においても取り入れられています。しかし、昨今では北枕が主流であり、また地域・会場・宗教によっても方角が異なる場合がありますので、事前に確認しておくと安心です。
本記事では、頭北面西に焦点を当てて解説しましたが、ご葬儀に関する慣習はほかにも数多くあります。いざという時に故人様を穏やかな気持ちでお見送りできるよう、少しずつご葬儀に関する知識を深めてみましょう。
間違えのない葬儀社の選び方や注意点をはじめ、さまざまな葬儀の知識・マナーを分かりやすくお伝えします。