盂蘭盆会とは?意味や歴史、期間中の過ごし方、宗派ごとに違う点まで解説
盂蘭盆会(うらぼんえ)とは、一般的に「お盆」と呼ばれる仏教行事のことを指します。ご先祖様の供養を行う大切な行事ですが、具体的には何をすべきなのでしょうか。
本記事では、盂蘭盆会の由来や風習について解説し、宗派ごとに異なる点もご紹介いたします。正しくご先祖様の供養を行うためにも、この機会に行事の意味や基本的なマナーを理解しておきましょう。
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盂蘭盆会とは?
盂蘭盆会とは、多くの方にとって馴染み深い「お盆」のことをいいますが、どのような意味や由来がある行事なのでしょうか。まずは、盂蘭盆会の基礎知識から確認していきましょう。
盂蘭盆会は「お盆」の正式名称
盂蘭盆会は、一般的に「お盆」と呼ばれている仏教行事の正式名称です。古くから行われている先祖供養のための行事であり、毎年7月または8月の13〜16日に実施されます。
現代ではお盆と呼ばれ、ほとんどの地域では新暦の日付に合わせて、8月13〜16日に行われるのが主流になりました。お盆の期間には、仏壇にお供えをしたり、お墓参りをしたりするのが通例です。
盂蘭盆会の由来・歴史
盂蘭盆会という言葉は、古代語であるサンスクリット語の「ウランバナ」が語源といわれています。ウランバナは「逆さ吊り(逆さ吊りの苦しみ)」という意味であり、日本では言葉が訛って「うらぼんえ」として広まっていったようです。
なぜ盂蘭盆会の語源になったのかは、次のような中国仏教の伝承が影響していると考えられています。
【盂蘭盆会の由来にまつわる逸話】
お釈迦様の弟子である目連尊者は、神通力の持ち主です。
神通力で亡くなった母親の姿を探したところ、餓鬼の世界に堕ち、逆さ吊りにされて苦しんでいることを知りました。
母親を救うため、目連は食べ物や水を差し出しましたが、口に入る直前に燃え尽きてしまいます。
なすすべがない目連は、お釈迦様に相談すると「夏の修行を終える7月15日に、すべての修行僧に食べ物や飲み物を施せば、その功徳により母を救えるであろう」と説かれます。
後日、目連はお釈迦様の教えの通りに実践し、その功徳で母親は極楽往生を遂げたそうです。
目連尊者が、逆さ吊りの苦しみを受けている母親を救ったという逸話から、ウランバナは「死者の苦しみを解放する」という言葉として用いられるようになりました。そして亡き母への供養の話が日本に伝わり、先祖供養の行事として盂蘭盆会が行われるようになったようです。
なお、中国から日本に盂蘭盆会が伝わったのは、7世紀頃といわれています。東アジア諸国でも盂蘭盆会のような行事が行われており、旧暦の7〜8月に催されるのが一般的です。
盂蘭盆会の期間
盂蘭盆会は、全国的に8月13〜16日を中心に行われていますが、東京をはじめとする一部地域では7月13〜16日に行われています。日本には、旧暦のお盆と新暦のお盆の二つが存在するため、地域によって期間が異なることを覚えておきましょう。
新盆・初盆について
新盆とは、故人様が亡くなってから初めてお迎えするお盆のことです。正確には、四十九日後(忌明け後)に迎える初めてのお盆を新盆と呼びます。なお、新盆と初盆は呼び方が違うだけで、言葉の意味は同じです。
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詳しく見る盂蘭盆会の過ごし方
ご先祖様の霊を供養する盂蘭盆会では、どのように過ごすのが相応しいのでしょうか。ここからは、一般的な盂蘭盆会の過ごし方について解説していきます。
盆飾り・お供え
盂蘭盆会の時期には、ご先祖様の霊をお迎えするために盆飾りやお供えをします。仏壇に盆提灯を飾り付けたり、精霊馬(しょうりょううま)をお供えしたりするのが一般的です。
迎え火・送り火
お盆の初日には、ご先祖様の霊が迷わず帰ってこられるように、迎え火を焚きます。そしてお盆の最終日には、ご先祖様の霊をお見送りするために、送り火を焚くのが通例です。
迎え火や送り火は、家またはお墓の前でおがらを燃やして行いますが、近年は野外で火を焚くことが難しくなっています。そのため、火の代わりとして「盆提灯」を利用するケースも少なくありません。
お墓参り
盂蘭盆会の風習として、ご家族でお墓参りに行くことも挙げられます。お墓参りに明確な決まりはありませんが、ご先祖様の霊をお迎えするという意味合いから、お盆の初日である13日にお参りするのが好ましいされています。
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盂蘭盆会では、ご先祖様や故人様を供養するために、お盆法要を行う場合もあります。一般的には、僧侶を自宅に招いてお経を読んでいただき、その後に参列者全員で食事をするケースが多いです。
地域で行われているお盆の行事
お盆の期間中には、先祖供養を目的とするさまざまな行事が開催されます。特に有名な行事は、以下の通りです。
【地域で行われているお盆の行事】
行事 | 開催地 |
---|---|
精霊流し | 九州の一部地域 |
灯籠流し | 広島や京都など |
盆踊り | 全国各地 |
打ち上げ花火 | 全国各地 |
大文字の送り火(大文字焼き) | 京都 |
精霊流しは、故人様の霊を送り出すための伝統行事であり、盆踊りはご先祖様の霊を供養するための踊りです。事前に参列する行事の意味や目的を理解しておけば、より丁寧な供養が行えるでしょう。
盂蘭盆会で行う法要
お盆の時期には、先祖供養のために法要を行う場合がありますが、その内容やマナーについて気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。以下では、盂蘭盆会で行う法要について詳しく解説します。
施餓鬼法要(施餓鬼会)
施餓鬼(せがき)法要とは、餓鬼の世界で苦しむ方や、無縁仏となり供養されない方に施しを与える儀式のことです。施しを与える者と受ける者の身分に、優劣があってはならないという考えから、「施食会(せじきえ)」と呼ばれることもあります。
施餓鬼法要を行う時期に決まりはありませんが、盂蘭盆会の期間に合わせて行うケースが多いようです。
棚経
棚経(たなぎょう)とは、僧侶が檀家の家を訪ね回り、精霊棚(しょうりょうだな)や仏壇の前でお経をあげる盆法要のことです。檀家の数が多い寺院では、盂蘭盆会の期間を迎える前から実施する場合があります。
また、檀家の家ではなく寺院で法要を行うケースもありますので、棚経を検討している方は一度菩提寺に確認してみましょう。
盂蘭盆会の法要でお布施・マナーについて
忌日法要と同様に、盆法要でも僧侶にお布施をお渡しするのがマナーです。お布施の金額については、新盆の場合は20,000〜30,000円、新盆以降の場合は5,000〜10,000円が目安とされています。
ただし、地域や宗教によって金額相場は異なるため、気になる方は僧侶にどれくらい包めば良いのか尋ねてみましょう。お布施は僧侶に感謝を伝えるためのものであり、具体的な金額が決まっている訳ではないため、相場を把握しておくことが大切です。
また、僧侶が会食を辞退する場合は御膳料として5,000〜20,000円程度を、自宅に僧侶をお招きする場合は御車代として5,000〜10,000円程度をお渡しします。
宗派によって異なる盂蘭盆会の捉え方・行い
盂蘭盆会は、日本で大切にされている仏教行事ですが、宗派によって捉え方や行いが異なります。それでは、どのような違いがあるのか確認していきましょう。
浄土真宗の場合
浄土真宗では「故人様は亡くなるとすぐに成仏する」と考えられているため、霊魂があの世とこの世を行き来するという概念が存在しません。そのため、お盆の時期に迎え火や送り火などを行う必要はないとされています。
なお、浄土真宗の盂蘭盆会は「歓喜絵(かんぎえ)」 と呼ばれており、亡くなった方を偲び、仏法に触れて過ごすのが一般的です。
浄土宗の場合
浄土宗では、一般的な盂蘭盆会を行います。他の宗派にはない特徴として、盆花にほおずきや枝豆などを逆さに吊して生けることが挙げられます。
真言宗の場合
浄土宗と同様に、真言宗でも一般的な盂蘭盆会を行います。他の宗派と比較して、提灯に重要な意味があるとされているのが大きな特徴です。
真言宗における提灯は、「霊魂が迷わずこの世に戻ってこられるように」という意味合いに加え、亡くなった方の迷いの世界での道を照らす灯りとしての役割があるとされています。
また追善供養を大切にしており、故人様のお墓だけでなく、本尊へのお参りも欠かせないと考えられている点も特徴の一つです。
曹洞宗の場合
曹洞宗も一般的な盂蘭盆会を行いますが、盆棚に「水の子」や「閼伽水(あかみず)」を用意することが重要とされています。水の子は、餓鬼道に落ちた無縁仏のお供えであり、閼伽水は仏に供える水のことです。
まとめ
盂蘭盆会とは、先祖供養のための仏教行事であり、いわゆるお盆のことです。この時期には、仏壇へのお供えやお墓参りなどをして、ご先祖様や故人様に供養と感謝の気持ちを表します。
ただし、地域や宗派によって過ごし方は異なりますので、事前に確認しておくと安心です。お盆の当日に慌てることがないよう、着実に準備を進めていきましょう。
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