納棺師とは?必要な資格や仕事内容、依頼する方法・費用まで詳しく解説
ご遺体を棺に納める際、旅立ちの準備を整えてくれる方を「納棺師」と呼びます。2008年に公開された映画「おくりびと」によって、納棺師の存在が広く認知されるようになりました。
しかし、専門的な職業であるため、具体的な役割を理解している方はあまり多くはありません。そこで今回は、納棺師がどのような職業なのかをご紹介いたします。また、納棺師に依頼する方法に加えて、費用の目安も併せてご紹介しますので、ぜひご一読ください。
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納棺師とは?
納棺師とは、故人様のお身体をきれいに整え、棺に納める方を指します。日本の一般的なご葬儀では、火葬を行うためにご遺体を棺に納めますが、そのサポートを行うのが主な仕事です。
はじめに、納棺師の基礎知識として、具体的な役割や必要な資格についてご紹介いたします。
納棺師の役割
納棺師の役割は、故人様の身支度を整えることです。衛生上や宗教上の理由から、ご遺体を洗い清めたり、化粧を施したりして、旅立ちの準備を整えます。
上記のように、亡くなった方のお身体をきれいに整え、棺に納めることを「納棺の儀」と言いますが、この一連の儀式を執り行うのが納棺師の役割です。余談ですが、ご遺体をきれいにする役割を担う納棺師は、別称として「湯灌師」や「復元納棺師」と呼ばれることもあります。
納棺師に必要な資格はない
納棺の儀において、重要な役割を担う納棺師ですが、特別な資格は必要とされていません。しかし、故人様をきれいにする方法や、ご葬儀における作法などに深い専門知識が求められるため、気軽に始められる仕事でないことも事実です。
なお、納棺師になるために必要な知識や技術については、以下の方法で学ぶのが一般的とされています。
<納棺師に必要な知識や技術を学ぶ方法>
●専門学校に通う
●葬儀社に入社する
●専門業者に就職する
専門学校では、ご葬儀に関する知識を網羅的に学習でき、その中には後述する湯灌(ゆかん)や納棺のカリキュラムも含まれています。一方、葬儀社や専門業者の場合では、直接的な指導を受けることが可能です。
納棺師の仕事内容
納棺師の役割は「故人様の身支度を整える」ことですが、具体的には何を行うのでしょうか。ここからは、納棺師の仕事内容を詳しくご紹介していきます。
末期(まつご)の水
末期(まつご)の水とは、臨終後に行われる最初の儀式であり、内容はご遺族などが故人様の口に水で潤わせるといったものです。その由来は諸説ありますが、「お釈迦様が亡くなる前に水を欲した」という話から、亡くなった方の口を潤わせるという風習が生まれたとされています。
また、末期の水には「喉を潤して安らかに旅立ってほしい」という意味合いもあります。ただし、現代では儀式を簡略化することもあり、宗派や地域によっては執り行われない場合もあるため、事前に確認しておくと間違いがありません。
湯灌(ゆかん)
湯灌(ゆかん)とは、故人様のお身体を洗い清める儀式です。その方法は様々で、専用の浴槽を使うこともあれば、アルコールを含ませた脱脂綿で拭き清める場合もあります。
湯灌の主な目的は、ご遺体の衛生状態をきれいに保つことです。また、生前の悩みや穢れ(けがれ)を洗い流すという宗教的な意味合いもあり、故人様が安らかに成仏できるようにとの願いを込めて行われます。
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エンゼルケアとは、人が亡くなった後に行う死後処置のことです。明確な定義はありませんが、感染予防として行う処置やご遺体をきれいに整えるための化粧など、死後に行うケアをエンゼルケアと呼びます。
現在の日本では、病院で亡くなる方が約80%を占めており、エンゼルケアは看護師によって行われるのが一般的です。しかしながら、病院の対応状況や故人様が亡くなった場所によっては、納棺師が行うこともあります。
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エンバーミングとは、ご遺体の保存・防腐・修復を目的とする特殊な処置のことです。こちらの処置に関しては、「エンバーマー」と呼ばれる有資格者が行います。
以下の表に、納棺師とエンバーマーの主な違いをまとめましたので、この機会に双方の違いを把握しておきましょう。
【納棺師とエンバーマーの主な違い】
項目 | 納棺師 | エンバーマー |
---|---|---|
目的 | 故人様の身支度を整える | ご遺体の状を衛生的に保つ |
方法 | 納棺の儀を通じて安らかな表情や見た目にする | 専用の機器や薬品を使用して保全処置をする |
場所 | 葬儀場、自宅(立ち会い可) | エンバーミング施設(立ち会い不可) |
可能な作業 | 洗髪、整髪、化粧、着せ替え | 修復、保全処置、洗髪、整髪、化粧、着せ替え |
資格 | 不要 | IFSA認定資格 |
納棺師はご遺体の表面的なケアを専門としますが、エンバーマーはご遺体の修復や保全処置も行うことが可能です。なお、エンバーミングを行うためには、IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)の資格試験に合格しなければなりません。
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前述の通り、納棺師の主な仕事は、ご遺体の表面的なケアを行うことです。その一つが身繕いであり、故人様の表情を生前の状態に近づけたり、死装束やご希望の服装に着替えさせたりします。
また、死化粧と呼ばれる「送り化粧」を施すことも、納棺師の仕事です。ご遺体に化粧を施す行為には、故人様の尊厳を守り、ご遺族の悲しみを癒やす効果があると言われています。
納棺
故人様の身支度を整えた後、納棺師はご遺体を棺に納めます。納棺作業は、ご遺体を傷つけないようにするために二人以上で行いますが、昨今ではご遺族が手を添えるケースも少なくありません。
以上が納棺師の仕事内容であり、日本で古くから行われている納棺の儀になります。
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詳しく見る納棺師に依頼したほうが良いのはどんな場合?
ここまでの内容を見て、納棺師の役割や仕事内容についてご理解いただけたと思います。では、どのような場合に納棺師の力を借りると良いのでしょうか。以下では、納棺師に依頼したほうが良いケースをご紹介します。
湯灌をしてもらいたい場合
湯灌をしてもらいたい場合、納棺師に依頼することで丁寧に洗い清めてもらえます。特に、故人様が以下のケースに該当する際は、納棺師への依頼を検討してみましょう。
<納棺師に依頼したほうが良いケース>
●病気などの理由により、入浴する機会が限られていた場合
●お風呂や温泉が好きな方であった場合
●きれい好きな性格な方であった場合
湯灌は亡くなった方のお身体を清潔にするための儀式であり、生前の悩みや穢れも洗い流せると言われています。故人様のことを思い、「できる限りのケアをしてあげたい」と考えている方も、納棺師に依頼すると良いでしょう。
ご遺族の精神的負担を軽減したい場合
納棺師に依頼することで、ご遺族の精神的負担を軽減できる可能性があります。なぜならば、納棺の儀により故人様が生前の姿に近づけば、ご遺体を見たときの精神的なショックが和らぐためです。
以下のように、ご遺族が大きな負担を感じやすい状況である場合は、納棺師に依頼してケアしてもらうと良いでしょう。
<納棺師に依頼した方が良いケース>
●遺体に損傷が見られる場合
●事故や自死などで亡くなった場合
ご遺体に損傷があったり、事故などで突然亡くなったりしたとき、精神的なショックから故人様を直視できない方もいらっしゃいます。上記はあくまで一例ですが、ご遺族の気持ちに配慮したいのであれば、納棺師に依頼することをおすすめします。
納棺師に依頼する方法
故人様が安らかに旅立てるよう、「納棺の儀を丁寧に執り行いたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。ここからは、納棺師に依頼する方法をご紹介していきます。
葬儀社から依頼をしてもらう
納棺師の施しを受けたい場合、葬儀社から依頼をしてもらえます。ご遺族の要望に応えるため、多くの葬儀社は納棺師と提携していますので、ご自身で依頼することに不安がある方は、相談してみると良いでしょう。
納棺師に依頼するのにかかる費用
納棺師に依頼するのにかかる費用は、おおよそ60,000〜120,000円が相場です。湯灌をせずに化粧や着せ替えなどを行う場合は60,000円前後、専用の浴槽を持ち込んで入浴する場合は120,000円前後が目安になります。
葬儀社やオプションの有無によって金額は異なりますので、事前に内容をよく確認してから申し込むと安心です。
まとめ
納棺師には「故人様の身支度を整える」という重要な役割があります。ご遺族の気持ちに寄り添いつつ、納棺の儀を丁寧に執り行ってくれますので、故人様との最後の時間を穏やかな気持ちで過ごせるでしょう。
「湯灌をしてもらいたい」「ご家族の精神的負担を抑えたい」など、専門的なケアが必要な際は、納棺師に依頼することをおすすめします。
間違えのない葬儀社の選び方や注意点をはじめ、さまざまな葬儀の知識・マナーを分かりやすくお伝えします。