宇宙葬とは|違法ではない?注意点やかかる費用を紹介します
近年は家族形態の変化により、埋葬方法が多様化しています。お墓を持たない方が増え、ご遺骨を自然に還す葬法(自然葬)が注目を集めています。今回ご紹介する「宇宙葬」もそのひとつです。
しかし、宇宙葬はなかなか馴染みのない葬法であるため、違法性や費用などについて気になっている方も多いでしょう。本記事では、宇宙葬の基礎知識をはじめ、注意点やかかる費用について詳しく解説します。
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宇宙葬とはご遺灰を宇宙に飛ばして散骨する葬送方法
宇宙葬とは、故人様のご遺灰やご遺骨を専用のカプセルに納め、宇宙に飛ばして散骨する葬送方法です。1997年にアメリカで実施されたのが始まりといわれており、埋葬方法が多様化している日本でも新たな葬法として広がりつつあります。
自然葬には「樹木葬」や「海洋散骨」といった方法もあります。しかし、宇宙への憧れを持つ方は多く、生前に宇宙空間での散骨を希望する方が増えているようです。
宇宙葬は違法ではない?
前提として、日本では墓地以外の区域で埋葬を行ってはならないと法律で定められています。しかし、宇宙葬は「違法ではない」というのが現在の主流の考え方です。法務省が「葬送のひとつとして節度を持って行われる限り、宇宙葬のような自然葬は遺骨遺棄罪にはあたらない」との見解を示しているため、宇宙葬に違法性はないといえるでしょう。
宇宙葬は主に4種類ある
一口に「宇宙葬」といっても、打ち上げ方法にはさまざまな種類があります。以下では、宇宙葬の主な種類を4つご紹介します。
①バルーン宇宙葬
「バルーン宇宙葬」とは、故人様のご遺灰やご遺骨をバルーン(風船)に入れて空へ飛ばす方法です。成層圏に突入するとバルーンが割れ、空中で散骨されるという仕組みになります。なお、成層圏は宇宙空間ではないものの、非常に高い場所であることから広義での宇宙として捉えられています。
バルーン宇宙葬は、ほかの葬送方法に比べて費用が安いです。そのため、ハードルが低い葬送方法ともいわれています。
②流れ星のようにご遺灰を流す方法
故人様のご遺灰をカプセルに納め、人工衛星に乗せて流すという方法を選ぶ方も少なくありません。流れ星のようにご遺灰を流すことから「流れ星供養」と呼ばれています。
なお、打ち上げられた人工衛星は、地球を周回した後に大気圏へ突入して燃え尽きます。選択するプランによっては、専用アプリを使用して人工衛星の位置を確認したり、宇宙空間からの視点で地球を見たりすることも可能です。
③月面をお墓にする方法
宇宙葬では、カプセルに納めたご遺灰をロケットに乗せ、月まで送ることも可能です。一般的には「月面供養」と呼ばれており、月をお墓に見立てて供養するのが大きな特徴といえます。
また、埋葬地が月面となるため、ご遺族はどこからでも月を見上げてお参りすることが可能です。ほかの宇宙葬とは異なり、散骨ではなく安置となる点も特徴として挙げられます。
④宇宙の遥か彼方に飛ばす方法
月面での埋葬のほか、ご遺灰を納めたカプセルをロケットに乗せ、宇宙の遥か彼方に飛ばすことも可能です。この方法を「宇宙散骨」と呼びます。
宇宙の果てを目指した長い旅路となるため、特に宇宙への憧れが強い方にとって魅力的に映る葬法といえるでしょう。ただし、費用相場が1,200,000円以上と高額なので、バルーン宇宙葬などに比べるとハードルは高いです。
宇宙葬の2つのメリット
日本でも注目を集めている宇宙葬には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここからは、宇宙葬を行うメリットについて解説していきます。
故人様の遺志を尊重できる
宇宙葬の特筆すべきメリットとして、故人様の遺志を尊重できることが挙げられます。科学的技術の向上により、宇宙との距離が近く感じられるようにはなったものの、一個人が宇宙を訪れることは容易ではありません。
しかし宇宙葬であれば、一般的な金額よりも少ない負担で「宇宙に行きたい」という夢を叶えられます。故人様の想いに寄り添うことで、お見送りをするご遺族も心が満たされるでしょう。
手元にご遺骨を残せる
自然葬ということから、「すべてのご遺灰やご遺骨を撒くのだろう」というイメージを持っている方も多いでしょう。しかし、宇宙空間に打ち上げられるのは数グラムとごくわずかです。
手元にご遺骨が残り、故人様の存在を近くに感じられるのは、ご遺族にとって大きなメリットになり得るでしょう。なお、残ったご遺灰やご遺骨は別の方法で供養する必要があります。
宇宙葬を行う際の注意点
宇宙葬は、ロマンを感じられる魅力的な葬法である一方、いくつか注意すべきポイントがあります。以下で解説する3つの注意点も参考に、宇宙葬を行うべきか検討してみてください。
打ち上げには時間がかかる
前述のとおり、宇宙葬にはさまざまな種類があります。その中でも、「流れ星供養」「月面供養」「宇宙散骨」は打ち上げまでに時間がかかる場合がほとんどです。上記の方法は、複数人のご遺灰をまとめて一緒に打ち上げるため、申込みからすぐに実施されるとは限りません。
また、場合によっては打ち上げが中止になることもあります。スケジュール調整が難しいため、ご遺族や業者の方とよく話し合い、デメリットを認識したうえで申し込むようにしましょう。
残ったご遺灰は別の方法で供養する
先述したように、ご遺灰が手元にある場合、何か別の方法で供養しなければなりません。追加の供養をする方は、相応の時間や費用がかさんでしまうということを頭に入れておく必要があります。
なお、風船を用いる「バルーン宇宙葬」であれば、すべてのお骨を空中に散骨することが可能です。また、宇宙にこだわりがない場合は、同じ自然葬である「樹木葬」や「海洋散骨」なども検討してみると良いでしょう。
日本で宇宙葬できる会社はない
現在、日本国内で宇宙葬を取り扱っている会社はほとんどありません。相見積もりを取って比較することが困難であるため、依頼する業者を決めるのが難しいということも押さえておく必要があります。
また、宇宙葬を執り行うのは基本的にアメリカの会社であり、日本にはいくつかの代理店が存在します。宇宙葬の費用が高額であるのは、仲介窓口から申し込むという仕組みが少なからず関係しているでしょう。
宇宙葬にかかる費用
宇宙葬にかかる費用は、選択する葬送方法や飛ばす距離などによって変動します。以下の表に、おおよその費用相場をまとめてみましたので、目安としてご参考ください。
【宇宙葬にかかる費用の目安】
葬送方法 | 費用相場 |
---|---|
バルーン宇宙葬 | 200,000円〜 |
流れ星供養 | 300,000円〜(打ち上げのみの場合) |
月面供養 | 1,200,000円〜 |
宇宙散骨 | 1,200,000円〜 |
最も安価なのは「バルーン宇宙葬」で、1人あたり200,000円ほどで執り行えます。一方で、流れ星供養のオプション付きプランをはじめ、月面供養や宇宙散骨は1,000,000円を超えるケースが多いです。決して安い金額とはいえないため、ご家族の間で予算についても相談しながら、最適な業者・プランを選択しましょう。
まとめ
埋葬方法が多様化している日本では、新たな葬法として「宇宙葬」が注目を集めています。ロマンを感じられる魅力的な葬法ではあるものの、打ち上げまでに時間がかかったり、費用が高額であったりと注意点があるのもまた事実です。どの葬法にも長所・短所があるため、ご家族の間でしっかりと話し合い、故人様やご遺族にとって最善と思える方法を選択してみてください。
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