神式のご葬儀を分かりやすく解説!儀式の流れやマナーを押さえよう
日本には、仏教をはじめさまざまな宗教が存在しており、その中のひとつに「神道」があります。現在は仏教徒の方が圧倒的に多く、神式でのご葬儀に参列する機会が少なくなっています。そのため、いざ神式のご葬儀に参列するとなった際、流れやマナーがわからずに戸惑う方もいらっしゃるでしょう。
今回は、神式のご葬儀で気をつけるべきマナーや、ご葬儀の流れについて解説していきます。神道は、仏教と違う死生観を持っているため、言葉遣いになどに配慮が必要です。ご葬儀で、ご遺族・親族に失礼のないよう、事前に神式のご葬儀について知っておきましょう。
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神式(神道)とは?
神式(神道)とは、日本に古くからある宗教のひとつであり、仏教とは違う教え・死生観を持っています。そのため、神式で執り行われるご葬儀は、一連の流れや儀式の内容が仏教と異なります。神式と仏式はどのように違うのか、次項にて詳しく見ていきましょう。
神式と仏式との違い
神式と仏式は、そもそもの発祥が違います。神式は日本で生まれ、先祖崇拝などの考えに基づいて形成されていった宗教です。一方、仏教はインドが発祥となっており、インドから中国へ伝来し、飛鳥時代に日本にも流れ着きました。
このように、神式と仏教では発祥が違うため、死生観も異なります。仏教では、故人様は仏となり、釈迦のもとへ向かうとされています。故人様が無事に極楽浄土へ行けるために祈りを捧げるのが、仏式のご葬儀です。
一方、神道では、故人様は家の守り神となると考えられています。神式のご葬儀は、故人様を神様として奉るための儀式であるため、仏教の死生観を意味する「冥福・成仏・供養」などの仏教用語は控えなければなりません。
神式のご葬儀の特徴
神式のご葬儀は「神葬祭(しんそうさい)」「葬場祭(そうじょうさい)」と呼びます。ご葬儀には、仏式で見られない特徴的な儀式があり、その儀式が以下の3つです。
・手水の儀
・玉串奉奠
・神棚封じ
どれも神式のご葬儀には欠かせない儀式なので、事前におおまかな内容を押さえておくようにしましょう。
①手水の儀
手水の儀(ちょうずのぎ)とは、参列者の手や口を清める儀式です。神社に参拝した際の手水と似ており、以下の流れで行われます。
①右手でひしゃくを持ち、水を汲む
②左手に3回かける
③左手を皿にして、水をそそぎ、口をすすぐ
④左手に再度水をかける
⑤懐紙で手と口を拭く
ひしゃくに水をくむのは1回で、つまり1杯の水ですべての手順を行います。手を洗う回数や、口をすすぐ回数は、宗旨によって異なる場合があります。
神道のご葬儀ではご葬儀会場の出入り口に手水用の桶が置かれることもありましたが、現在では省略されることが多いです。
②玉串奉奠
玉串奉奠(たまぐしほうてん)とは、榊(さかき)の枝に紙をつけたものをささげる儀式で、仏教では焼香にあたります。自身の心を乗せて神様に捧げる大切な儀式となっており、一般的に以下の手順で進めます。
①玉串を両手で受け取る
②根本を右手で持ち、左手は葉先を支える
③根元が手前にくるよう、時計回りに回す
④右手を玉串の中央に添えて、根元が左にくるように回す
⑤根元を祭壇に向け、両手で供える
⑥一歩下がり、二礼二拍手一礼をする(音は立てない)
⑦席に戻る
③神棚封じ
神棚封じは、半紙で神棚を封じる儀式です。神道では、「死」は穢れとされているため、神聖な神棚を守るために半紙で封じます。神棚封じをしている期間は、普段のお祀りをストップしなければなりません。
また、神棚封じは五十日祭をもって解除します。五十日祭とは、仏教でいう四十九日であり、五十日祭をもって忌明けとなります。
神式のご葬儀の流れ
神式では、ご臨終から火葬までの流れが仏式と異なります。おおまかな流れは、以下のとおりです。
①ご臨終
②帰幽奉告
③枕直しの儀
④納棺の儀
⑤通夜祭
⑥遷霊祭
⑦葬場祭
⑧火葬祭
⑨埋葬祭
⑩帰家祭・直会
次の項目では、上記の儀式を「ご臨終から納棺/お通夜からご葬儀の前/ご葬儀当日」の3つに分けて、それぞれの流れについて解説していきます。
ご臨終から納棺までの流れ
ご臨終から納棺までは、以下の儀式を執り行います。
①帰幽奉告(きゆうほうこく)
②枕直しの儀
③納棺の儀
なお、帰幽奉告までの流れは、仏式と変わりません。医師から死亡診断書を受け取り、葬儀社を通してご遺体を霊安室から搬送しましょう。
①帰幽奉告
帰幽奉告とは、神棚や祖霊舎(それいしゃ)に対し、故人様の死を神様に伝える儀式です。祖霊舎とは、仏教でいう仏壇のようなものであり、これと同時に神棚封じも行います。
②枕直しの儀
枕直しの儀とは、遺体を北枕にして部屋に安置し、白い布で顔を覆って屏風を立て、さらに故人様の近くに小さな祭壇を用意する儀式です。祭壇には、米・塩・故人様が生前好きだった食べ物をお供えするのが一般的です。
③納棺の儀
納棺の儀は、ご遺体を棺に納める儀式です。このとき、死装束を着せる場合と、顔に白い布を被せるだけの場合の2パターンがありますので、詳しくは葬儀社のスタッフか親族に尋ねておくと良いでしょう。
ご遺体を納めた棺は白い布で覆い、祭壇にお供えをします。その後、礼拝を行うまでが一連の流れになります。
お通夜からご葬儀前までの流れ
納棺を終えてからご葬儀が開催されるまでには「通夜祭」と「遷霊祭(せいれいんさい)」を執り行います。通夜祭は仏教でいうお通夜とほぼ同じ内容で、遷霊祭は神式でしか執り行わない儀式となっています。
①通夜祭
通夜祭は、仏式でいうお通夜に該当します。故人様が家の守り神となり、「子孫共々家を守ってくれるように」と祈る儀式です。
儀式の最中は、雅楽演奏や新歓による祭司(さいし)・祭文(さいもん)奉上などを行います。また、ご遺族や参列者は玉串奉奠を行うのが一般的です。
②遷霊祭
遷霊祭は、死者の魂を霊璽(れいじ)へと移すための儀式です。霊璽とは、仏教でいう位牌にあたり、故人様の魂を奉るための大切な依代です。また、遷霊祭では「遷霊詞(せんれいし)」が奏上されます。
なお、神道では、魂は夜に移動すると考えられているため、儀式では夜を再現するために部屋の明かりを消すのが特徴です。魂を移動させるといった内容から、御霊移し(みたまうつし)とも呼ばれています。
ご葬儀の流れ
ご葬儀当日は、以下の流れで進んでいきます。
①葬場祭
②火葬祭
③埋葬祭
④帰家祭・直会
各儀式の内容について見ていきましょう。
①葬場祭
葬場祭(そうじょうさい)とは、仏式でいうところのご葬儀・告別式です。自宅あるいは葬儀場で、故人様とお別れをするために執り行います。
②火葬祭
火葬祭とは、火葬場で執り行われる儀式です。主に火葬前に実施するもので、神官の祭詞奏上と、参列者による玉串法典が行われます。
③埋葬祭
埋葬祭とは、遺骨を埋葬する際に執り行う儀式です。本来、神式では火葬した遺骨をそのままお墓へ埋葬していました。しかし、現代ではすぐに埋葬せず、一度自宅へ持ち帰るのが一般的です。納骨は五十日祭の忌明け後にするパターンが多く、その際には埋葬祭も執り行います。
④帰家祭・直会
帰家祭(きかさい)とは、ご葬儀から帰った後に行う儀式です。家に入る前に、塩や手水で体を清めます。その後、祭壇に遺骨と霊璽を安置し、神葬祭が無事執り行われた報告を行います。
直会(なおらい)とは、ご葬儀に関わった方々や神職者をねぎらうための宴席です。仏式でいうお斎に似ており、神職や関係者を招いて食事を取ります。
神式のご葬儀におけるマナー
最後に、神式のご葬儀におけるマナーについて解説していきます。基本的に、服装などのマナーは仏式と変わりありません。ただし、香典の書き方や言葉遣いなど、配慮しなければならないポイントは多々ありますので、基本的なマナーは事前に把握しておくようにしましょう。
服装
服装のマナーは、おおむね仏式のご葬儀と変わりません。ご遺族・参列者はブラックスーツである準喪服を着用するのが一般的です。小物類はすべて黒で統一し、アクセサリーは外していくのがマナーですが、結婚指輪は問題ないとされています。なお、仏式のご葬儀で必要な数珠は、神式で使用しないので持参しないようにしましょう。
香典(玉串料)
神式の場合、香典は「玉串料」という呼び方をされています。表書きは「御玉串料(おんたまぐしりょう)」「御榊料(おさかきりょう)」「御神前(ごしんぜん)」のいずれかを記載します。また、水引は白黒か双銀の結び切りを選びましょう。
香典袋については、白無地を選びます。蓮の花が描かれているものは仏式用なので、用いないように注意しましょう。また、内袋がある場合は表の中央に金額を記載します。
金額を書くときは、漢数字の大字で書くのがマナーです。たとえば、10,000円を包んだ場合は「金壱萬圓也」と記載します。そして、裏面には住所と名前を記載しましょう。また、神式のご葬儀における香典の相場は以下のようになります。
本人から見た故人様の関係 | 金額相場 |
---|---|
両親 | 50,000〜100,000円 |
兄妹・姉妹 | 30,000〜50,000円 |
祖父母 | 10,000〜30,000円 |
叔父・叔母 | 10,000〜30,000円 |
その他の親戚 | 5,000〜20,000円 |
配偶者のご家族 | 10,000〜100,000円 |
会社関係者 | 5,000〜10,000円 |
渡す際は、仏教用語を使わないように注意しましょう。死生観が違うため、「ご愁傷様です」などは用いません。「御霊(みたま)の平安をお祈りいたします」と、神式に合った言葉を添えて渡すのがマナーです。
お供え
神式では、お供え物を「神餞物(しんせんぶつ)」と呼びます。基本的に食べ物となり、お米・野菜・お菓子などが一般的です。
仏式のように「生臭物を禁止する」といった規則はありませんが、お花をお供えする習慣はありません。また、お線香も仏教でしか使用しない仏具であり、神道にはふさわしくありません。なお、のしには「御供」「奉献」「奉納」のいずれかを記載します。
お布施
お布施は、神葬祭を執り行ってくれた神職者に対してお渡しする金銭です。神式の場合は「祭祀料(さいしりょう)」といいます。相場は100,000円〜500,000円ほどとされており、参列者の人数や地域によって異なります。心配な場合は、事前に葬儀社の方や親族に相談しておくと安心です。
また、お布施を包む際に用いる封筒の表書きは、「御玉串料」「御祈祷料」「御礼」などで問題ありません。
そして、お布施はご葬儀を執り行った後に渡すのが一般的です。ただし、仏式と同じように直接手渡すのはマナー違反なので、切手盆などに乗せて渡しましょう。
言葉・挨拶
繰り返しにはなりますが、神式と仏式では死生観が異なるため、言葉遣いや挨拶には注意が必要です。以下の表を参考にして、なるべく仏教用語を使わないように心がけましょう。
仏教用語 | 神式で言い換える場合の言葉 |
---|---|
・成仏 ・往生 |
帰幽 |
・ご冥福をお祈りいたします ・ご愁傷様です |
御霊のご平穏をお祈り申し上げます |
まとめ
神道とは、仏教よりも古くから日本にある宗教です。仏教とは死生観が異なり、故人様は家の守り神になると考えられているため、「成仏」「供養」といった考え方はありません。神式のご葬儀では、故人様の御霊を神様として祀るための儀式を執り行います。
また、神式でのご葬儀は、仏教のご葬儀にはない独特な儀式が多くあります。今後参列するとなった際に戸惑うことがないよう、事前におおまかな流れやマナーなどを把握しておくようにしましょう。
間違えのない葬儀社の選び方や注意点をはじめ、さまざまな葬儀の知識・マナーを分かりやすくお伝えします。