浄土宗のご葬儀を分かりやすく解説!儀式の流れやマナーを押さえよう
日本にある宗教の中で最も信仰されているのが仏教ですが、仏教と一口にいってもさまざまな宗派があり、それぞれ異なる特徴を持っています。自分の宗派とは別のご葬儀に呼ばれた際、または嫁いだ先が違う宗派であった場合、作法が分からずとまどってしまうかもしれません。今回は、仏教宗派の中でも浄土真宗のご葬儀におけるマナーやご葬儀の流れなどについて解説していきますので、気になる方はぜひ読んでみてください。
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浄土宗とは?
浄土宗とは、日本で派生した仏教宗派のひとつです。平安時代に始まり、一般市民を中心に人気がありました。「南無阿弥陀仏」と唱えることで、極楽浄土へたどり着けると考えられている「他力本願」を主とした教えの仏教です。
浄土宗の成り立ち
浄土宗は、1175年に、法然という僧侶が開いた仏教宗派のひとつです。阿弥陀如来を本尊としており、「浄土三部経(じょうどさんぶきょう)」と呼ばれるお経を経典としています。この時代、仏教は貴族が信仰するものであったため、一般市民には縁のない存在だったそうです。
そのような中、救うべき人々が救われていない現状に疑問を持った法然が、「南無阿弥陀仏」と唱えるだけで救われるといった教えを説いたのが浄土宗の始まりです。
浄土宗と浄土真宗との違い
浄土宗と名前が似ている宗派に「浄土真宗」があります。混同されがちな2つですが、成り立ちや教えの内容が違う、別の宗派です。
浄土真宗は、法然の弟子である親鸞(しんらん)が開いた宗派で、浄土宗をベースにしつつ、違う教えを持っています。たとえば、浄土宗は「南無阿弥陀仏」と唱えればすべての方が救われるといった教えでした。一方の浄土真宗は、念仏を唱えるだけで極楽浄土へ行けるといった教えはありません。
浄土宗のご葬儀の特徴
浄土宗では、ほかの仏教宗派には見られない儀式があります。代表的なものが、僧侶・参列者全員で念仏を唱える「念仏一会(ねんぶついちえ)」と、火葬前の儀式である「下炬引導(あこいんどう)」です。それぞれどのような儀式なのか、ここから詳しく見ていきましょう。
①参列者一同で南無阿弥陀仏と唱える「念仏一会」
念仏一会とは、僧侶と参列者が一緒に「南無阿弥陀仏」を唱えるといった儀式です。唱える回数は10回ほどとされており、故人様が極楽浄土へたどり着けるよう祈るために行います。
「南無阿弥陀仏」は、ご葬儀の最中に僧侶が「同称十念(どうしょうじゅうねん)」と言ったタイミングで唱えます。場合によっては木魚や鉦(しょう)を鳴らして拍子を取ることもあり、その際は念仏一会が終わるまでは途切れません。また、場合によってはシンバルのような楽器を打ち鳴らすこともあります。
②僧侶による「下炬引導」の儀式
「下炬引導」とは、火葬の前に執り行われる浄土宗独特の儀式で、「引導下炬(いんどうあこ)」とも呼ばれています。故人様が極楽浄土へ行けるようにと祈るための儀式であり、僧侶は松明や線香を用います。最後に、松明の火から柩へ火を移すのですが、現代では防災の観点から実際に火をつける行為はほとんどしません。
浄土宗のご葬儀の流れ
浄土宗のご葬儀は、念仏一会・下炬引導を筆頭に、ほかの宗派には見られない儀式が多々あります。お通夜に関してはそこまで違いはありませんが、ご葬儀が特徴的です。次の項目では、お通夜・ご葬儀に分けて、それぞれの流れについて解説していきます。
お通夜の式次第
浄土宗のご葬儀は、一般的に以下のような流れで進んでいきます。
①奉請(ぶじょう)
阿弥陀如来・釈迦如来など、仏様をお呼びするために行います。
②懺悔(ざんげ)
生前の罪を仏様に懺悔する儀式です。
③剃度作法(ていどさほう)
剃髪を行います。昔は本当に切っていましたが、現代では剃髪するしぐさのみです。
④十念
浄土宗独特の儀式で、「南無阿弥陀仏」と10回ほど唱えます。
⑤三帰三竟(さんきさんきょう)
仏様の弟子になるにあたり、仏・法・僧の三宝に帰依するよう、故人様に伝えます。
⑥授与戒名
戒名を授かる儀式です。
⑦開経偈(かいきょうげ)
「開経偈」とは、読む前に唱える偈(げ)のことを指します
⑧誦経(ずきょう)
経典を唱えます。
⑨発願文(ほつがんもん)
「往生礼讃偶」に収められている経典を読みます。
⑩摂益文(しょうやくもん)
「観無量寿経」に収められている経典を読みます。
⑪念仏一会(ねんぶついちえ)
僧侶と参列者が一緒に念仏を唱える儀式です。
⑫総回向偈(そうえこうげ)
念仏の徳により、故人様が極楽浄土へ行けるよう願うために行われます。
以上が一般的なお通夜の式次第ですが、地域によっては儀式の呼び名や内容が異なる場合があります。
ご葬儀の式次第
浄土宗のご葬儀は、以下の流れで進むのが一般的です。
①入堂(にゅうどう)
僧侶が入場します。
②香偈(こうげ)
お香を焚いて、心の準備をします。
③三宝礼(さんぼうらい)
仏・法・僧の三宝に礼をします。
④奉請(ぶじょう)
仏様をお呼びするための儀式です。
⑤懺悔偈(さんげげ)
生前の罪を仏様に懺悔します。
⑥転座(てんざ)と作梵(さぼん)
本尊に向けていた体を柩の方へ向けます。
⑦下炬引導(あこいんどう)
僧侶が松明を持ち、柩に火をつける動作をします。
⑧弔辞(ちょうじ)
いただいた弔辞・弔電を読み上げます。
⑨開経偈(かいきょうげ)
「開経偈」とは、読む前に唱える偈(げ)のことを指します。
⑩誦経(ずきょう)と焼香
「四誓偈(しせいげ)」もしくは「仏身観文」を読経する儀式です。この間、参列者は焼香をあげていきます。
⑪摂益文(しょうやくもん)
「観無量寿経」に収められている経典を読みます。
⑫念仏一会(ねんぶついちえ)
僧侶と参列者が一緒に念仏を唱える儀式です。
⑬回向(えこう)
念仏の徳により、故人様が極楽浄土へ行けるよう願うために行われます。
⑭総回向偈(そうえこうげ)
念仏一会で得た徳を、平等に施すための儀式です。
⑮総願偈(そうがんげ)
「四弘誓願」に収められた4つの修行の内容と、「徳を積んでともに極楽浄土へ行きましょう」といった内容の念仏を唱えます。
⑯三身礼(さんじんらい)
仏様への帰依を表明する儀式です。
⑰送仏偈(そうぶつげ)
仏様へお帰りいただくための儀式です。
⑱退堂
僧侶が退場します。
⑲対面
ご遺族や親族が、最後に故人様と対面します。
⑳出棺
柩を霊柩車に乗せ、出棺します。
以上が、浄土宗の一般的なご葬儀です。お通夜の式次第と同様に、儀式の呼び方や内容は地域によって若干異なるため注意してください。
浄土宗のご葬儀におけるマナー
浄土宗のマナーは、他の宗派のご葬儀とほとんど変わりありません。一度マナーを把握し、ご葬儀の際は失礼のない振る舞いをするように心がけましょう。次の項目では、服装・数珠・香典・お供え・焼香・お布施に分けて、それぞれのマナーを解説していきます。
服装
一般的に、ご遺族や参列者の場合は準喪服の着用が一般的です。「平服でお越しください」と案内があった場合は略喪服で構いません。衣類や小物は黒で統一し、光沢のある素材や殺生を連想させる毛皮製品は避けるようにしましょう。
また、アクセサリー類は基本的に外しておきましょう。ただし、結婚指輪は装着しても良いとされています。なお、真珠のネックレス・イヤリングなどは、涙を表す小物として使用が許されています。
数珠
浄土宗で使われる数珠は「日課数珠(にっかじゅず)」と呼ばれており、2つの輪がつながっている形となっています。男性と女性で種類が異なり、男性の場合は「三万浄土」、女性の場合は「六万浄土」と呼ばれる数珠を使用します。
ご葬儀の最中は、左手首に二連ともかけるのがマナーです。合掌する際は、数珠の中で一番大きな珠(親玉)を、親指と人差し指の間に挟んで持ちます。
香典
香典を用意する際、水引は白黒の結び切りを選び、表書きは「御霊前」または「御香典」と記載しましょう。香典袋の裏面には、住所と包んだ金額を記入します。中袋がある場合は、中袋の表中央に金額を記載するのがマナーです。
金額は漢数字の大字(旧字体)で書き、記入する際は薄墨の毛筆を使用するのがマナーです。また香典の金額相場は、近親者であれば10,000〜100,000円、会社関係者や友人であれば、おおよそ5,000〜10,000円とされています。
香典袋は、受付にお渡しするまで袱紗に包んでおきます。渡す直前で袱紗から取り、文字が相手から読める向きにそろえましょう。
お供え
お供え物のマナーは、ほかの仏教と変わりありません。果物やお菓子などを選ぶ方が多く、また故人様の好物をお供えする場合もあります。
お花を用意する場合は、白ユリやカーネーションなどが一般的です。お供え物と同じように、故人様が好きだったお花を用意しても良いでしょう。ただし、案内状にお供え物を辞退すると書いていた場合、用意する必要はありません。
焼香
浄土宗の場合、焼香の回数に決まりはありません。会場の参列者に合わせ、1~3回の間で調整しましょう。具体的な焼香のやり方は以下のとおりです。
①親指・人差し指・中指で抹香をつまむ
②左手を軽く添え、額に押ししただく
③香炉にくべる
なお、お線香は1本のみ立てる場合が多いです。
お布施
お布施のマナーは、ほかの仏教宗派と特に変わりありません。表書きには「お布施」もしくは「御布施」と記載します。ご葬儀前の挨拶、もしくはご葬儀後にお礼を伝えるタイミングでお渡しするのが一般的です。
また、お布施は切手盆の上に乗せたままお渡しするのがマナーです。手渡しは失礼にあたるため、十分に注意しましょう。なお、金額相場は地域や寺院によって異なりますので、事前に確認しておいても良いでしょう。
まとめ
浄土宗は日本の仏教宗派のひとつで、平安時代後期に法然という僧侶が開きました。現在も多くの方が信仰しているため、浄土宗の教えに沿ったご葬儀に参列する機会も多くあります。浄土宗のご葬儀で困ることがないよう、事前に浄土宗の教えや基本的なマナーを押さえておくようにしてください。
間違えのない葬儀社の選び方や注意点をはじめ、さまざまな葬儀の知識・マナーを分かりやすくお伝えします。