生活保護受給者もご葬儀はできる?費用ゼロで行える葬祭扶助の申請方法も解説
身内に生活保護受給者がいらっしゃった場合、「ご葬儀の費用はどうなるのか…」と心配になるのが心情です。生活保護受給者は、「健康で文化的な最低限度の生活」を営めるよう、国が支援すると法律で定められています。ご葬儀の費用もこの枠内に入っているため、補助制度を利用してご葬儀を執り行えます。
とはいえ、生活保護受給者全員が、ご葬儀の補助制度を利用できるわけではありません。今回は、ご葬儀の支援制度を受けるためにはどうすれば良いのか、負担してもらえる範囲や内容、費用について解説していきます。
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生活保護受給者も葬儀はできる?
日本では、生活保護法に基づいて、生活保護受給者が亡くなった後も最低限の尊厳を維持できるようになっています。そのため、逝去後のご葬儀は生活保護制度を利用して執り行うことが可能です。ただしご葬儀の費用を得るには、地域の自治体に申請を行い、許可を得る必要があります。
生活保護受給者のご葬儀で使える「葬祭扶助」
生活保護受給者がご葬儀の支援を受けるには、「葬祭扶助制度」の申請が必要です。申請は、地域の福祉事務所にて行えます。制度を利用したご葬儀は、「福祉葬」「生活保護葬」「民生葬」とも呼ばれており、基本的には無料でご葬儀を執り行うことが可能です。
ここからは、どのような場合であれば葬祭扶助制度を利用できるのか、適用のための条件や、補助される金額・内容について解説していきます。
葬祭扶助の金額
葬祭扶助制度を利用してご葬儀を執り行った場合、地域の自治体がご葬儀の費用を負担してくれるため、基本的には無料です。
自治体が制度で負担してくれる金額は、大人の場合212,000円、お子様の場合は169,600円までと決められています。ただし、自治体や年度によっては異なることもあるため、申請を検討中の方は事前の確認が必要です。
葬祭扶助を受けるための条件
葬祭扶助制度を利用できるのは、以下の条件に当てはまる方のみです。
・喪主(ご遺族)が生活保護受給者である
・故人様が生活保護受給者である
ただし、上記の条件に当てはまっている方であっても、次の項目に該当する場合には、葬祭扶助が適用されません。
・故人様に、最低限のご葬儀が行える貯金や資産がある場合
・扶養義務者(直系血族と兄弟姉妹)に、ご葬儀の費用を支払える方がいる場合
このように、生活保護受給者全員が葬祭扶助制度を利用できるわけではないため注意しましょう。
葬祭扶助でできる葬儀の内容
葬祭扶助制度で補助されるのは、ご葬儀のために必要な最低限の内容のみです。そのためご葬儀の形式は、お通夜や告別式を行わず、火葬のみを行う「火葬式(直葬)」だけで、別の形式を選ぶことはできません。
また、最低限保証されている費用として、主に以下のものが挙げられます。
・死亡診断書または死体検案書の発行費用
・ご遺体の搬送費用
・ご遺体の安置料(ドライアイス代なども含む)
・棺や骨壷などの費用
・火葬費用
ただし、故人様の財産でまかなえる項目がある場合、自費での支払いが必要です。
生活保護受給者のご葬儀を葬祭扶助で行う流れ
続いて、生活保護受給者が葬祭扶助制度を利用し、ご葬儀を執り行うまでの流れについて説明していきます。基本的には、「福祉事務所に連絡→葬祭扶助の申請→ご葬儀の依頼→ご葬儀を実施→必要な料金を支払う」と進んでいきます。
福祉事務所や民生委員に連絡する
生活保護受給者が亡くなられた際は、近隣の福祉事務所や民生委員に連絡を行いましょう。これにより、担当の方からご葬儀に関するさまざまなアドバイスを受けられます。
葬祭扶助の申請をする
次に、葬祭扶助制度の申請を行います。基本的に、故人様の住民票がある役所で手続きを行いますが、故人様と申請者の管轄が異なる場合は申請者が住んでいる役所に行きましょう。
注意点として、葬祭扶助制度は必ず「ご葬儀の前」に申請する必要があります。ご葬儀を執り行った後に申請を行った場合、必要な費用は支払われません。
葬儀社に葬祭扶助を使ったご葬儀を依頼する
葬祭扶助制度の申請を行った後は、葬儀社との打ち合わせに入ります。このとき、葬儀社に「葬祭扶助制度を利用する」という旨を伝えましょう。
また、葬祭扶助制度を利用したご葬儀はすでに内容が決まっています。打ち合わせといっても日時と場所を決める程度であり、ご葬儀のプランを一から考えるといったものではありません。
ご葬儀を執り行う
事前に決めた日時において、ご葬儀を執り行います。ご葬儀の形式は、前述したとおり火葬式なので、僧侶による読経などはありません。
ご葬儀費用を支払う
福祉事務所から葬儀社へ、ご葬儀にかかった費用の支払いが行われます。当然ながら、このとき喪主が行うことはほとんどありません。
生活保護受給者のご葬儀に関するよくある疑問
葬祭扶助制度を利用する際、戒名や納骨の費用はどうなるのでしょうか。最後に、多くの方が疑問に思う内容について、それぞれ詳しく解説していきます。
戒名は授けてもらえる?
葬祭扶助制度を利用してご葬儀を執り行う場合、戒名は授けられません。本来、戒名は仏様の弟子となった証として授けられる名前であり、ご葬儀において戒名は必ず授けるものではありません。
国が金銭的な援助を行い、戒名がつけられることはありませんが、自費で戒名をつけてもらうことはできるので、希望する場合は一度担当の方に相談してみると良いでしょう。
遺骨を納めるのに費用はかかる?
葬祭扶助制度の対象範囲は「骨壷への納骨」までであり、お墓や納骨堂への納骨は対象外です。そのため、お墓や霊園などに施設へ納骨したい場合、自分自身で費用を用意しなければなりません。納骨する費用が捻出できない場合は、ご遺骨を手元に置いておくといった方法もあります。
香典は受け取っても問題ない?
香典は収入としてみなされないため、受け取っても問題はありません。ただし、金銭を受け取った事実には変わりないので、念のため役所に伝えておいた方が無難です。
遺品整理の費用は負担してもらえる?
現在の日本には、生活保護受給者に対する遺品整理の補助制度はありません。生活保護制度は、基本的に受給者が亡くなられた時点で終了となり、そのため遺品整理や住居の退去費用などは親族が負担する必要があります。
まとめ
生活保護受給者が亡くなられた場合、「葬祭扶助制度」を利用してご葬儀を執り行えます。ただし、すべての受給者が利用できるものではなく、国が提示している条件に合致した方のみ対象となる制度です。ご逝去後のご葬儀について、少しでも不安がある場合には、事前に役所や福祉事務所に対象となるか相談しておきましょう。
間違えのない葬儀社の選び方や注意点をはじめ、さまざまな葬儀の知識・マナーを分かりやすくお伝えします。