日蓮宗のお葬式での特徴や流れ、知っておきたいマナーを詳しく解説
仏教にはさまざまな宗派があり、宗派によってさまざまなしきたりや決まりごとがあります。故人様が生前に信仰していた宗派がある場合には、その宗派の作法に沿ってご葬儀が執り行われることになるので、事前に確認しておくようにしましょう。
今回は、仏教の宗派のひとつである日蓮宗の特徴や考え方、ご葬儀に関するマナーについて詳しく解説していきます。
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日蓮宗とは?
日蓮宗は、鎌倉時代中期に日蓮聖人が興した宗派です。当初は「日蓮法華宗(にちれんほっけしゅう)」と称されていましたが、時代の流れと共に省略されて「日蓮宗」になったと伝えられています。
日蓮宗の特徴・考え方
日蓮宗では、複数あるお経の中で「妙法蓮華経(法華経)」を大切にしています。法華経では「どのようなものにも仏性(仏の心)がある」という教えが説かれており、法華経の教えを心から信じるという意味を持つ「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」を唱えることを何よりも重要だと考えています。
日蓮正宗との違い
日蓮正宗も日蓮聖人の教えを大切にしている宗派です。しかし、こちらは日蓮聖人を日蓮大聖人と呼び、ご本尊としている点に違いがあります。
日蓮宗のお葬式の特徴
他の宗派のご葬儀で見られる木魚は使用せず、木鉦(もくしょう)を打ち鳴らしてお経が読まれます。そしてご葬儀の最中は、参列者も含めた全員で「南無妙法蓮華経」を唱えます。
南無妙法蓮華経(法華経)の題目
南無妙法蓮華経は、「法華経の教えを心から信じる」という意味が込められています。そのため、唱えることによって故人様が無事に霊山浄土にたどり着き成仏する手助けができるとされています。
戒名ではなく法号を授けられる
信仰に入った証として、戒名ではなく法号が授けられます。戒名と同じく生前に受けておくものですが、近年ではお亡くなりになってから授かるケースが多くなっているようです。
開棺・引導の儀式
ご葬儀の最中には、日蓮宗独自の「開棺」「引導」の儀式が行われます。
・開棺:僧侶が棺の蓋を叩いて、音を立てながら読経し、お花やお茶、お膳などを祭壇に供える
・引導:仏様と故人様を引き合わせるために、払子(ほっす)を振り引導文を読む
ただし、上記2つの儀式のやり方は宗教者によって変わることも多いため、参考程度に留めておくようにしましょう。
日蓮宗のお葬式の流れ
日蓮宗のご葬儀に参列する際には、基本の流れについて知っておきましょう。
1.総礼:合掌して「南無妙法蓮華経」を3回唱える
2.道場偈(どうじょうげ):諸仏・諸尊を招くための道場偈を流す
3.三宝礼(さんぽうらい):仏教の三宝は仏・法・僧であると考え心を込めて祈る
4.勧請(かんじょう):仏・菩薩・神々・日蓮聖人など諸仏・諸尊をこの場に迎える
5.開経偈(かいきょうげ):法華経の功徳をたたえ、仏の教えに出会えたことに感謝する
6.読経:法華経の中でも重要な部分を拝読する
7.咒讃鐃鈸(しゅさんにゅうはち):演奏による供養を行う
8.開棺:僧侶が棺の蓋を叩いて音を立てながら読経し、お花やお茶、お膳などを祭壇に供える
9.引導:仏様と故人様を引き合わせるために、払子を振り引導文を読む
10.弔電:弔電が読まれる
11.読経:法華経の中でも重要な部分を拝読する
12.祖訓:宗祖の文章を拝読する
13.唱題:「南無妙法蓮華経」を唱えながら、焼香を行う
14.宝塔偈(ほうとうげ):法華経の功徳をたたえる
15.回向(えこう):現世の安穏と死後良い所に生まれるよう願う
16.四誓(しせい):人々を救うための誓いの言葉を唱える
17.三帰(さんき):三宝に帰依し精進することを誓う
18.奉送(ぶそう):諸仏・諸尊を送る
19.閉式:導師・式衆が退場し、司会が閉式の言葉が述べる
導師入場から閉式までは、おおよそ45分~1時間程度かかるといわれています。
日蓮宗のお葬式でのマナー
ここからは、日蓮宗のご葬儀に参列する際のマナーについて解説していきます。
服装・持ち物のマナー
服装は基本的に他の宗派のご葬儀と同様で、男性はモーニングなどの正喪服もしくは準喪服を着用し、ネクタイと靴下、皮靴は黒でまとめます。女性は黒紋付などの正喪服もしくは準喪服を着用し、アクセサリーをつける際には派手なものは避けましょう。アクセサリーについては、一連のパールネックレスがご葬儀の場にはふさわしいと考えられています。
また、子どもは学生なら制服を、未就学児や制服がない学校に通っている場合には黒や紺の派手ではない服装を選んでください。靴は学校指定のもの、あるいは白や紺のスニーカーでも構いません。
参列する際に必要な持ち物は「数珠」と「香典」ですが、これらのマナーについては次項で詳しく解説します。
数珠のマナー
日蓮宗の数珠には特徴があり、菊房と呼ばれる房2本がひとつと3本がひとつ、108個の主玉がついた形状であることが一般的です。左手の中指に房が3本の側を掛け、一回ひねった後に、右手の中指に房が2本の側を掛けてから手を合わせます。
ただしご自身の数珠を持っている場合には、日蓮宗のご葬儀に参列するからといって買い直す必要はありません。
香典のマナー
ご葬儀に参列する際には香典を持参します。金額の相場は故人様との関係性によって異なりますので、下記を参考にして金額を決めてみてください。
・ご友人:5,000~10,000円
・隣近所の方:3,000~10,000円
・会社関係:5,000~10,000円
・叔父・叔母:10,000~30,000円
・祖父母:10,000~50,000円
・兄弟姉妹:30,000~50,000円
香典は袱紗に包んで持参します。受付で渡す際に袱紗から出し、両手で差し出してください。また、日蓮宗では四十九日で故人様が成仏するという考えがあり、香典袋の書き方は四十九日前と後とで異なります。
・表書き:「御霊前」「御香典」
・表書きの下:氏名
・表書き:「御仏前」「御香典」
・表書きの下:氏名
中袋には「氏名」「住所」「金額」を記載します。金額を書く際には「一→壱」「二→弐」「三→参」「万→萬」「円→圓」と旧漢字を使用してください。
また、表書きや氏名などを記入する際は薄墨を使います。この薄墨には、「涙で墨が滲んでしまった」「急いで駆けつけたために墨をする時間がなかった」などの意味合いがあります。
焼香のマナー
焼香は以下の手順に沿ってあげるようにしてください。
1.祭壇に進み、ご遺族と参列者に一礼する
2.焼香台の前に立ち、合掌してから一礼する
3.親指と人差し指で抹香をつまみ、額に押しいただいて火種にくべる
4.合掌し、そのまま二、三歩下がり、ご遺族と参列者に一礼する
また、焼香の回数は導師が3回、一般の参列者は1回なのでこちらもマナーとして覚えておくようにしましょう。
振る舞いのマナー
ご葬儀は厳粛な雰囲気の中で執り行われます。できるだけ大きな声を出さないなど、大切なご家族を亡くしたご遺族に配慮した行動を心がけてください。私語は極力慎み、また仏式葬儀で避けられている「忌み言葉」の使用を控えましょう。
・浮かばれない
・迷う
・苦しむ
・追って
・ご生在中
また、「重ね重ね」「くれぐれも」などの重ね言葉も「不幸が重なる」と解釈されるためNGです。
お布施のマナー
お布施は、喪主から僧侶に対して読経のお礼として手渡しします。金額は故人様・寺院との関係性によって変わるため、迷った場合にはご年配の親族または僧侶に聞いてみてください。
まとめ
仏教にはさまざまな宗派があり、宗派によって作法は異なります。全体の流れだけでなく、焼香の回数や線香の本数など宗派によってそれぞれ違いがあるものです。お亡くなりになった方が日蓮宗を信仰していた場合、今回ご紹介した内容をおさらいして配慮ある行動を心がけてみてください。
間違えのない葬儀社の選び方や注意点をはじめ、さまざまな葬儀の知識・マナーを分かりやすくお伝えします。