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死装束とは?着せる理由やタイミング、種類、正しい着せ方を解説


死装束とは?着せる理由やタイミング、種類、正しい着せ方を解説

日本で「死者」や「幽霊」といえば、ほとんどの方が白い着物を着て三角の布を額に当てた姿を思い浮かべるのではないでしょうか。「死装束(しにしょうぞく)」とは亡くなられた方が着る衣装を指し、多くの方が「幽霊」や「死者」と聞いて連想した姿こそが「死装束」といわれるものです。

そこには日本の宗教観や歴史が関係しています。本記事では死装束を着る理由や仏式と神式における死装束の違いについて解説します。

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死装束とは?

死装束は故人様に着ていただく特別な衣装です。よく幽霊の姿として描かれる白い着物に三角の白い布を頭につけている姿こそ、死装束を着ている方の姿になります。

次の項目では、死装束を着せるようになった経緯や白色の理由について解説していきます。

死装束を着せる理由は?

仏式の死装束は「経帷子(きょうかたびら)」と呼ばれる着物で、本来は修行僧が着る着物でした。修行僧が着る着物が死装束とされている理由は、仏教の考え方にあります。

仏教では、故人様の魂は亡くなると極楽浄土へ旅に出ると考えられています。旅には修行僧の衣装が最適であるとされているため、死装束として修行僧の衣装を着せるようになりました。

なぜ日本で死装束といえば仏式の着物が連想されるのかというと、日本ではご葬儀の約9割が仏式で執り行われているからです。

ただし、同じ仏教でも死装束を着ない宗派があります。それが浄土真宗です。浄土真宗の教えでは故人様の魂は旅をすることなく極楽浄土へ行けるとされています。そのため、浄土真宗では死装束を着せるという考えはありません。

日本には、仏式の他に「神式」の葬儀方法があります。神式にも死装束というものはありますが、仏式とはまったく異なる衣装となります。

死装束が白い理由

日本では「不幸」=「黒」というイメージがあります。このイメージは西洋から輸入された考え方で、それまでは喪服も白色を用いていた時代がありました。しかし、死装束だけは現代でも白色です。なぜ白色なのか、その理由について解説します。

日本では古来より「紅白」という配色が多く用いられてきました。紅白は「対」を表す配色であり、「紅」は「誕生」、「白」は「死」を意味するとされてきました。「赤ちゃん・赤ん坊」という単語に「赤」がついているのもそのためです。

「白」には、「純粋」「穢れがない」という意味もあわせ持っています。婚礼の際に白無垢を着るのは、このような意味があるからです。故人様が旅立つ際の衣装が白色なのは、「生前の穢れをすべてなくし、浄土へ旅立って欲しい」という願いが込められているからです。

死装束は全身真っ白なので、よく「白装束」と呼ぶ方もいらっしゃいます。呼び方としては、「死装束」と「白装束」のどちらを使用しても問題はありません。しかし、ことばの意味は異なります。白装束とは、「全身白で統一した和装」という意味があり、対して死装束は故人様のみが着る着物を指します。

死装束の種類は宗教によって異なる

日本の2大宗教が、「仏教」と「神道」です。これまでは仏教における死装束について解説してきましたが、神道にも決められた衣装が存在します。

次の項目ではそれぞれの死装束と、「キリスト教」ではどのような死装束を用意するのかについて解説します。

【仏教】仏衣、経帷子

仏教では「経帷子」と呼ばれる修行僧の衣装を着用します。「経帷子」にはお経が書いてあるものと、白無地の2種類があります。どちらを着るかはご遺族の自由です。「仏衣(ぶつえ)」と呼ばれる場合もあります。

仏式の死装束には衣装以外にもさまざまな装具が用意されます。以下はそれら装具の一覧です。

●傘

浄土に旅立つ故人様を雨や強い日差しから守ってくれるとされています。ただし、近年では傘をつけない場合も多いです。

●杖

故人様が倒れることなく浄土へたどり着けるように持たせます。

●手甲(てこう・てっこう)

手の甲に当てる布です。故人様の手を日光から守り、浄土までの旅路で流れた汗をぬぐうために着用します。

●脚絆(きゃはん)

すねに当てる布です。すねを守るという意味や、旅の最中に足が疲れないように当てられます。

●白足袋、草履

ふたつとも旅に欠かせない履物です。草履は足に密着し、旅路にピッタリの履物だからです。

●三角頭巾

三角の白い布で、故人様の頭につけるものです。「天冠(てんかん)」とも呼ばれており、つける理由にはさまざまな説が存在します。一説には高貴な方がかぶっていた冠から由来しており、閻魔様に失礼のないよう着用したとされています。

●頭陀袋(ずたぶくろ)

故人様の首からかける袋です。小物入れの役割をはたしており、かつては経典やお布施などが入れられていました。

●六文銭

三途の川を渡る際に必要な船の乗車賃です。昔は頭陀袋の中に実際のお金を入れていました。しかし現代でお金を燃やす行為は禁止されているため、紙にプリントアウトした六文銭で代用しています。

【神道】神衣

神道の死装束は「神衣(かむい)」と呼ばれ、性別によって異なる衣装を用意するところが特徴的です。それぞれの特徴と由来については下記のとおりです。

男性の死装束は、平安時代の貴族が狩のときに着用していた「狩衣(かりぎぬ)」と呼ばれる衣装をまといます。装具は烏帽子(えぼし)と、笏(しゃく)です。

女性の場合は「小袿(こうちぎ・こうちき)」と呼ばれる衣装を身にまといます。小袿は平安時代の身分が高い方が着用していた衣装です。装具として扇も持たせます。

狩衣と小袿が死装束とされている理由には、神道の教えが関係しています。狩衣と小袿はどちらも神職に従事している方の普段着で、その姿は神様の姿そのものを表しているとされてきました。

神道では、人は亡くなった際に守護霊のような神様となり、子孫や家を守るとされてきました。そのため、神様になるためにふさわしい衣類として、狩衣と小袿を死装束にしたのです。

【キリスト教】エンディングドレス

キリスト教では故人様が着る衣装に決まりはありません。そのため、ほとんどの方が生前に大切にしていた衣類をまといます。キリスト教では「エンディングドレス」と呼びます。

昨今ではこのような葬送の方法が人気を集めており、仏教や神道の方でも「エンディングドレス」を希望する方が増えました。

死装束はいつ、どうやって着せる?

死装束は亡くなった直後にすぐ着せるものではありません。次の項目では、死装束はどのタイミングで誰が着せるのかについて解説していきます。

死装束を着せるタイミングは「納棺前」

死装束を着せるタイミングは、「納棺前」が一般的です。納棺前には「湯灌(ゆかん)」を行い、湯灌がおわったあとに死装束を着せることが多いです。

死装束は葬儀社が着せるのが一般的

死装束を着せるのは、ほとんどが葬儀社の専門スタッフです。かつてはご遺族が着せていた時代もありましたが、現在はそのような場面はほとんどなくなりました。

死装束の着せ方

ここからは、日本で多くの割合を占める仏式の死装束について解説します。死装束の着せ方は特殊で、いわゆる「左前」と呼ばれる方法で着付けをします。相手から見たときに袂の左側が前になっている着せ方です。

左前にする理由は諸説あり、「逆の考え方」と「高貴な身分の方を真似た」という説が有力だといわれています。

「逆の考え方」というのは、右前で着物を着用する生者と区別するために左前にしたという説です。「高貴な身分の方を真似た」という説は、亡くなったときくらいは高貴な方と同じような着物の着方をして、来世では高貴な身分に生まれてくるようにと願いを込めたという説です。

左前が高貴とされているのは、奈良時代に定められた「衣服令(えぶくりょう)」という法律に起因します。この法律は身分によって着物の着方を指定するというもので、左前は高貴な方にのみ許された着方でした。

まとめ

死装束とは、故人様が最後に身につける衣装です。仏式と神式で衣装は異なり、仏式の場合は「経帷子」、神式の場合は「神衣」を身にまといます。それぞれの衣装は宗教の考え方に由来しており、その他の装具にもきちんと意味が存在します。

記事の制作・編集家族葬コラム編集部
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