グリーフケアとは?受けるべきか、効果やケア方法を解説します
近年、ご家族や身近な方を亡くした深い悲しみの中にいる方々をサポートする方法として、「グリーフケア」が注目を集めています。専門資格を持つカウンセラーも増えてきており、多くの医療機関や自助グループで取り入れられています。
そこで今回は、グリーフケアの意味や必要性、グリーフケアを受ける際のポイントについて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
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グリーフケアとは?
グリーフケアとは、「家族や身近な方を亡くした悲しみに苛まれ、喪失と回復の間で揺れ動いている方々に寄り添い、回復のサポートをする取り組み」です。
人は「死別」という特別な体験をすることで、喪失と立ち直ろうとする気力の間で激しく揺れ動きます。その過程では、精神的にも身体的にも不調をきたすことが多いです。そのような方々にそっと耳を傾け、あくまでもさりげなく寄り添うことで、心の回復を援助していくことをグリーフケアといいます。
グリーフケアの意味・歴史
「グリーフ(grief)」は、英語で「悲嘆」「深い悲しみ」という意味があります。「ケア(care)」は、「世話」「配慮」という意味です。
つまり「グリーフケア(grief care)」という言葉には、深い悲しみに打ちひしがた方々に寄り添い、サポートするという意味があります。
グリーフケアは、1960年にアメリカで提唱されたといわれています。その後、日本で意識され始めたのは1970年代のことです。
特に日本でグリーフケアが世間に認知されたきっかけは、2005年4月に起きたJR西日本の福知山線脱線事故でした。その後、2009年にグリーフケア専門の研究機関「グリーフケア研究所」が設立され、近年さらにグリーフケアに注目が集まっています。
グリーフケアで行うこと
グリーフケアでは、グリーフ状態にある方に対して、専門家や家族・友人がさりげなく寄り添いサポートを行います。
具体的な方法の1つは、心のうちを語る機会を設けることです。自身の感情を表現することは、悲しみを乗り越える一歩となることがあります。家族や友人に話を聞いてもらうのも有効ですが、専門家のカウンセリングや自助グループに参加して話を聞いてもらうのもおすすめです。
お通夜やご葬儀など、故人様とのお別れの儀式を行うこともグリーフケアの1つといえます。儀式を行うことで、ご自信の気持ちが整理されることもあります。
グリーフケアが必要となるのはどんな状態のとき?
深い悲しみに包まれている際は、精神や身体が通常とは異なる不調をもたらすことがあります。また行動の変化が起こる場合もあり、以下のような症状が重なった場合はグリーフケアが必要な状態であるといえます。
精神的状態
深い悲しみ状態にある際は、以下のような精神的な症状が出現します。
・怒り
・悲しみ
・罪悪感
・喪失感
・孤独感
・感情の麻痺
・空虚感
・無気力
・抑うつ
長期に亘ってこれらの症状が現れる場合は、グリーフケアが必要な状態である可能性があります。
身体的状態
深い悲しみによって精神的な不調だけでなく、身体的不調を引き起こすこともあります。
・睡眠障害
・食欲減退
・体重減少
・強い疲労感
・肩こりや頭痛
体力の低下から免疫機能の低下を引き起こすこともあります。身体的不調が感じる場合はまわりの方にサポートを求めましょう。
行動の変化
行動の変化では、以下のような症状が出現します。
・ぼんやりとする
・涙があふれてくる
・落ち着きがなくなる
・より動き回り働こうとする
・故人様の遺品や思い出の品を避ける
上記の症状が出ている方は、グリーフケアが必要です。単なる気分的な落ち込みと区別が難しい部分もありますが、放置していると、「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」や「うつ病」を発症する危険性がありますので、まわりの方に助けを求めることも重要です
グリーフケアを受けるメリット
グリーフケアを受けることによって、グリーフ状態にある方やまわりの方にいい影響をもたらすケースがあります。
グリーフ状態にある方にとってのメリット
グリーフケアを受けることで1人ではなく、まわりの方のサポートを受けながら、悲しみから立ち直ることできます。心のうちを他人に話すことで、自分が気づけなかった感情が分かり、心が楽になる場合があります。
まわりの方にとってのメリット
グリーフケアは、まわりの方にもいい影響を与える場合があります。
深い悲しみを感じている方とまわりの方が、グリーフケアの中で互いに心のうちを打ち明けることで、今まで知らなかった一面を知ることになるかもしれません。グリーフケアを通じて、疎遠になっていた家族や友人と、今までと違った関係性を築くきっかけになるかもしれません。
看護師などの専門職の方は、グリーフケアを通じて自分の看護を振り返り、成長することができます。このような経験は、次のご家族との関わりに活かすこともできるでしょう。また、看護師間でその経験や知識を共有することで、全体的なケアの質を向上させることも可能です。
グリーフケアを受ける際に大切なこと
ここからは、グリーフと立ち向かうグリーフケアにおいて大切なことについて解説していきます。
グリーフによってどんなことが起こるかを知る
グリーフケアを受ける際はグリーフの症状について正しい認識をすることが重要です。グリーフの症状について理解を深めることで、自身の不調が悲しみから来る症状なのか、全く無関係の症状なのか判断することできます。
大切な方の死によって引き起こされる悲嘆感情とその反応が「グリーフ」です。グリーフは病気ではありませんが「健康ではない状態」を指します。グリーフに陥った際は、体調を崩し、身体面に不調を感じる方が多いです。
グリーフによって「認知機能」が低下する場合もあります。物忘れが酷くなった高齢者を認知症ではないかと心配する方もいますが、喪失体験後に症状が悪化したのであれば、それは認知症ではなく、グリーフの反応である可能性があります。
グリーフの症状について認識を深めることで、適切なケアにつなげていくことができるでしょう。
悲しみの感情を表に出し、気持ちを整理する
グリーフケアにおいては、自分の感情を表現することが重要です。
日本人は感情表現が苦手で、必要以上に人目を気にする傾向があるといわれています。「人前で取り乱すことは良くない」と、無意識のうちに自分の心に蓋をしてしまう方も多いです。その背景には、「迷惑をかけたくない」「嫌な思いをさせたくない」といった自己犠牲にも似た過剰な遠慮があります。
グリーフから脱するには、抑え込んでいる思いや感情を自分らしく表現することが重要です。何か嫌なことがあったときは、誰かに話を聞いてもらうだけで心が少し軽くなります。喪失を体験したときも、心の中に抑え込んでいた感情を表に出すことで、気持ちが徐々に整理され楽になっていきます。
他の方からのサポートを受け入れる
グリーフケアでは、周囲のサポートを受け入れることが大きなポイントです。迷惑をかけたくないと自分の殻に閉じこもっていては、グリーフのプロセスから脱することは非常に難しいです。
ときには他の方のサポートを受け入れて、自分の感情に整理をつけることに専念してみてください。悲しみから立ち直って前向きな人生を送っていると、受けたサポートをお返しする機会が訪れるものです。
頼れる親しい方がいない場合は、医療機関や自助グループなどの専門機関の力を借りてみましょう。医療機関によっては「グリーフケア外来」を設けているので、有資格者のカウンセリングを受けることも可能です。
知り合いや専門家の力を積極的に借りてグリーフと向き合っていきましょう。
まとめ
大切な方の死別という特別な体験は、人を深い悲しみの底に突き落とします。精神的・身体的不調を引き起こす恐れもあり、立ち直りは容易ではありません。
深い悲しみから立ち直るためには、1人で抱え込まずにグリーフケアを受けるのもおすすめです。自分の感情を表に出し、自身の気持ちに整理をつけて周囲のサポートを受け入れることは、グリーフのプロセスから脱するための重要な役割を担ってくれます。
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