お焚き上げの意味とは?目的や時期、お焚き上げをしたほうが良いものなどを解説

昔から日本では、大切にしていたものや気持ちが込められたものには魂が宿るとされ、粗末に扱ってはいけないとされてきました。そのため、故人様が大切にされていた遺品やご自身の終活を進めていく中で、捨てるに捨てられなくて困ってしまうものが出てくると思います。そのような時に、供養として行うのが「お焚き上げ」です。
この記事では、お焚き上げの意味やその供養方法などについてご説明します。お焚き上げをしたほうが良いもの・できないものについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
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お焚き上げの意味とは?
お焚き上げとは、古くから日本で行われてきた宗教儀式の一つです。生前に故人様が大切にされていたものや粗末に扱うのが難しいものなどを供養していただいた後、焼いて天に還す儀式のことを指します。お焚き上げは仏教と神道で行われていますが、儀式に対する解釈はそれぞれ異なります。
●仏教…思い出の品を焚き上げることで故人様に返す儀式
●神道…火の神様の力をお借りして思い出の品を焚き上げることで天に還す儀式
教義によって若干の違いはありますが、「魂が宿っている品物を宗教儀式に則って供養して、炎でもって処分する」という点は、どちらの場合でも同じとなっています。
お焚き上げをする目的
お焚き上げには「故人様に大切なものを届ける」「悪い縁を断ち切る」などさまざまな目的があります。ここでは、お焚き上げをする主な目的を6つご紹介します。
故人様へ届け物をするため
お焚き上げは故人様へ届け物をする手段でもあります。故人様に対してこの世の品物を届けたい場合や納棺の際に入れ忘れてしまった品物がある場合、お焚き上げをすることで、その品物を故人様に届けることができるとされています。
神仏の御神体に元の場所に還っていただくため
神社でいただくお札やお守りには神仏の魂や力が宿るとされています。そのため、役目を終えたお札やお守りはごみとして処分せず、感謝の気持ちを込めてお焚き上げを行うのが一般的です。このお焚き上げには神仏の御神体に元の場所に戻っていただくという目的があります。
悪い縁を切るため
ご自身に悪いことが起きた時、それに関連する品物をお焚き上げすれば、悪縁を断ち切ることができるとされています。悪い縁を切ることで、良縁を招くともいわれており、新たなスタートを切るためにお焚き上げを依頼する方も少なくありません。
動物を供養するため
お焚き上げをする目的の一つに動物の供養があります。動物の毛皮を使用した衣類や小物をお焚き上げすることで、その動物たちの苦しみや痛みを慰め、供養することができるとされています。
取り憑いたものをお祓いするため
取り憑いたものをお祓いするため、寺院や神社などにお焚き上げを依頼する方もいらっしゃいます。「撮影した写真に霊が映り込んでいる」「人形やぬいぐるみなどから不穏な空気を感じる」というように、ご自身に良くないものが取り憑いたと感じた時、その原因と考えられる品物をお焚き上げすれば、供養できるといわれています。
感謝の気持ちを伝えるため
周囲の方々がご自身のために祈願してくれた「合格祈願のお札」や「入院中にいただいた千羽鶴」などの品物は、お焚き上げを行うことで感謝の気持ちを伝えられます。特に大切にしていたものを手放すときは、今までの感謝の気持ちを込めてお焚き上げをするのが望ましいでしょう。
お焚き上げをしたほうが良いもの・できないもの
さまざまな場面で用いられるお焚き上げですが、実は「お焚き上げをしたほうが良いもの」と「お焚き上げができないもの」があります。故人様に関わる品物であれば、何でもお焚き上げできるというわけではないため、それぞれについて見ていきましょう。
お焚き上げをしたほうが良いもの
お焚き上げをしたほうが良いものの代表的な例としては、次のようなものが挙げられます。
●お仏壇や仏具、神棚
●お札やお守り
●人形やぬいぐるみ
●写真
●達磨(だるま)
昔から日本では、神仏に関わるものや大切にしていたものには魂が宿ると考えられています。そのため、仏具や人形などを処分する際はお焚き上げをするのが一般的です。
また、故人様の思い出が込められたものはお焚き上げで供養できます。もし処分に困っている写真があれば、寺院や神社にお焚き上げを依頼し、供養してもらうのが良いでしょう。
縁起物であるだるまに関しても、処分する際は感謝の気持ちを込めてお焚き上げをするのが望ましいとされています。
お焚き上げができないもの
以下の通り、お焚き上げできないものには注意が必要です。
●パソコンなどの精密機械
●ガラス製品
●ビニール製品
●プラスチック製品
●有害物質が発生する危険物
●引火性があるもの
基本的に、燃えないものはお焚き上げができません。そのため、パソコンやガラス製品などは別の方法で処分する必要があります。
また、燃やすことで有害物質が発生する可能性があるものや、引火する危険性があるものもお焚き上げできないので注意しましょう。これらのものがお焚き上げできないのは、環境への影響や事故のリスクなどが懸念されるためです。
ちなみに、お焚き上げができないものについては、各自治体の指示に従って処分するのが基本的な選択肢となります。
お焚き上げはいつする?
お焚き上げを行う時期に厳密な決まりはありません。したがって、お焚き上げをする必要があると感じた時や故人様の死と区切りをつけたいと思われた時などに執り行われるのが一般的です。
また、近年では「四十九日法要」や「一周忌法要」などの節目に執り行うケースも増えています。ここからは、お焚き上げが必要になることが多いタイミングについて解説していきます。
お正月中や終わった後
お正月にはお札やお守り、縁起物などをお焚き上げするのが一般的です。初詣には新しいお札やお守りを求める方が多いため、それに合わせてお正月中にお焚き上げを行う寺院や神社も少なくありません。
また、お正月で使われたしめ縄や松飾りなどもお焚き上げするのが通例です。毎年1月15日前後になると、日本各地で「どんど焼き」という行事が開催されます。この行事はお正月飾りや前年のお札・お守りなどをお焚き上げするお祭りで、その呼び方は「左義長(さぎちょう)」など地域によってさまざまです。
人がお亡くなりになった後
故人様の遺品整理が必要になった時もお焚き上げで供養してもらうことが多いです。お焚き上げの時期に決まりはありませんが、一般的には四十九日法要や一周忌法要などの節目に執り行われるケースが多く見られます。急いでお焚き上げをする必要はありませんから、気持ちの整理がついたタイミングで依頼すると良いでしょう。
七夕が終わった後
七夕が終わった後には願いが書かれた短冊を処分しますが、その際にもお焚き上げをすることがあります。多くの神社では「短冊奉納」を受け付けており、奉納した短冊は神職によるご祈祷が行われた後、境内にてお焚き上げされます。
短冊奉納には「火の力を借りて短冊を天にお還しすることで、神様に願いが届けられる」という意味があるため、より良い処分方法といえるでしょう。
愛用品を処分する時
愛用品もお焚き上げで供養するのが望ましいとされています。ただし、寺院や神社の中にはお焚き上げの日程があらかじめ決まっているところも多いため、愛用品の処分を検討している方は早めに確認しておきましょう。
お焚き上げをしてくれる場所
お焚き上げをしてくれる主な場所としては、以下の2つが挙げられます。
●お寺や神社といった宗教施設
●お焚き上げや遺品整理を専門にしている業者
最後に、お焚き上げをしてくれる施設・業者の特徴をご紹介します。
お寺や神社といった宗教施設
寺院や神社にお焚き上げをお願いすることで、ご利益にあずかれるだけでなく、処分の費用を抑えられます。宗教施設に依頼する場合のお焚き上げの費用相場は以下のとおりです。
●合同供養…3,000〜10,000円程度
●個別供養…20,000〜70,000円程度
実際に納める金額は寺社や地域、供養の形式などによって異なります。また、宗教施設の中にはお焚き上げの費用が提示されていないところも多いため、事前に問い合わせてみると良いでしょう。
なお、どんど焼きでは無料でお焚き上げをしてくれることが多く、お札やお守りは納札所に無料で返納することが可能です。ただし、品物によっては受け入れてもらえなかったり、お焚き上げを受け付けている時期が限られたりすることもあるため、その点はご留意ください。
お焚き上げや遺品整理を専門にしている業者
お焚き上げや遺品整理を専門にしている業者は、対応可能な品物の種類が多いです。そのため、寺院や神社で断られてしまったものであっても引き取ってもらえる場合があります。
また、受付期間に制限がないため、基本的には好きなタイミングで依頼することが可能です。自宅で引き取りしてもらえるケースも多く、手間がかからない点もメリットとして挙げられます。
寺院や神社と比べると、業者のほうが利便性は高いといえますが、その分費用は割高です。規模や内容にもよりますが、専門業者に依頼する場合の費用は30,000〜50,000円程度が相場といわれています。
お焚き上げができない場合はどうする?
寺院や神社などでお焚き上げができない場合は、一般ごみとして処分するのが基本です。ご自身で処分する際には少量の塩をかけてお清めした後、感謝の気持ちを込め、半紙で丁寧に包んで処分するのが望ましいとされています。
まとめ
お焚き上げとは、大切なものを手放す際、火の力を借りて浄化・供養する儀式のことです。この儀式には「故人様に大切なものを届ける」「悪い縁を断ち切る」「感謝の気持ちを伝える」などさまざまな意味や目的があります。もし処分に困っているものがありましたら、お焚き上げによる浄化・供養を検討してみると良いでしょう。
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