葬儀知識・マナー 2021.06.04

エンバーミングってどんなもの？エンバーミングを施すケースやその手順とは？

終活やご葬儀の事前相談などの際に「エンバーミング」という言葉を聞くことがあるかと思います。火葬を執り行う日本では馴染みがあまりない言葉ではないでしょうか。しかし、欧米などの土葬が主流である国では一般的な遺体保存技術であるため、ぜひ覚えておきたい物です。

この記事では、エンバーミングについてその目的や手順などについてご説明します。

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エンバーミングとは？

エンバーミングは、ご遺体の保存・防腐・修復を目的として、専門の資格を持つ「エンバーマー」が行ったご遺体への特殊な処置を言います。つまるところ、「故人様を生前の姿に近づけて、とどめるための技術」のことです。なお、「エンバーミング」は日本語で、「死体防腐処理」「遺体衛生保全」などと訳されます。

エンバーミングでは、ご遺体の消毒・殺菌を行って、消化器官といった残存物の除去を行うほか、一部を切開して血液を出して、その代わりに防腐剤といった保存液を注入します。エンバーミングによって、10日間～2週間程度ご遺体を腐敗させずに保存することができます。

悲しいことですが、息を引き取った時点から人は腐敗が始まり、見た目の劣化がしていきます。ドライアイスや保冷庫を使用しても「凍結する」ことではないので、腐敗の進行を抑えることはできますが完全に止めることにはなりません。

そのため、ご葬儀までに日数が必要になってしまう場合、見た目の維持や腐敗防止という観点からエンバーミングを施します。

ご遺体を航空機を使って海外から搬送を行う場合、ドライアイスは安全上の観点から使用できません。そのため、ご遺体の保全を目的にエンバーミングを施します。

＜例＞

点滴や薬剤の影響から顔が膨張したり、長い闘病生活から顔がやせ細ってしまうこともあります。そのため、ご会葬してくださるご親族や知人・友人がいただいている故人様のお姿とかけ離れている場合もあります。

そのような場合には、ご遺族からの「元気だった頃の姿で皆さんとお別れをさせてあげたい」という想いやご本人からの「元気だった頃の姿で皆さんにお別れをしてたい」という希望を叶えるために、エンバーミングを施します。

日本でのエンバーミングは、エンバーマーと呼ばれる「一般社団法人日本遺体衛生保全協会（IFSA）」の資格試験に合格した方が、エンバーミング施設で行います。なお、エンバーミングの処置については3～4時間程度かかるとされています。一般的なエンバーミングについては以下のような流れになっています。

１．ご遺体の消毒と洗浄

ご遺体の状態を確認し、身体表面の消毒処理と洗浄を行います。

２．洗髪や洗顔

ご遺体の洗髪や洗顔、保湿剤の塗布がなされ、故人様の顔やその周囲が整えられます。ご遺族の希望に応じて、髭剃りや産毛剃りなども行われます。

３．体内の洗浄と防腐保全の処置

ご遺体の一部を1cｍ～1.5 cｍほど切開し、そこから血液などを排出した上で、防腐剤などの保全液が注入されます。保存液は全身を循環して、体内の清浄や保全を行います。

４．消化器官などの残存物の除去

食道・胃などの消化器官やその中に残っている食物、呼吸器官などの体内にある残存物を吸引して除去します。

５．縫合・修復・洗浄

体液を排出し保存液を注入した際に切開した箇所を縫合します。事故などで顔や体で損傷している箇所があれば修復し、再度全身の洗浄を行います。

６．衣装の着付け

故人様にご遺族から指定があった衣装や宗旨に則った衣装の着付けを行います。着付け後には、改めて顔の表情を整えるほか、整髪も行われます。

７．死化粧や納棺

ご遺族からの希望、あるいは自然に見えるような死化粧を施して、生前の姿に近づけます。なお、納棺に関してはエンバーミング施設ではなく、ご自宅にご遺体を安置後に葬儀社立ち合いのもと、別途行われることもあります。

故人様への処置としてエンバーミングとよく混同されるのが、「エンゼルケア」になります。

エンゼルケアは、エンバーミングと同じように故人様への処置のことを言いますが、もともと医療業界で「死後処置」と呼ばれていました。病院で亡くなられたら看護師が、ご自宅や高齢者施設で亡くなられたら葬儀社スタッフや施設職員がエンゼルケアを施します。

なお、病院で施されているエンゼルケアの処置内容は以下のようなものが一般的です。

上記のように、エンバーミングと比べると故人様の表面的なところを整えるのがエンゼルケアの主な目的と言えます。